REIT(リート:不動産投資信託)と聞くと、「高い分配金利回り」や「少額から不動産に投資できる」といったメリットを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、REITの真の価値はそれだけではありません。
この記事では、専門家のレポートを元に、一般的にはあまり知られていないREITの「意外な、しかし非常に強力なメリット」を5つ、分かりやすく解説します。

インフレに「攻守」両面で強い
インフレ(物価上昇)は、現金の価値を目減りさせる大敵です。多くの金融資産がインフレに弱い中、REITはインフレから資産を守る「ヘッジ機能」に優れています。
その理由は「攻守」の両面にあります。
- 防御(資産価値): インフレで建設資材や人件費が上がると、新しい建物を建てるコストが上昇します。その結果、既存の不動産の価値(REITが保有する資産)も相対的に上昇しやすくなります。
- 攻撃(インカム): 物価の上昇に合わせて、オフィスビルやマンションの「賃料」を引き上げることが可能です。賃料収入が増えれば、投資家への分配金も増加することが期待できます。
実は「未来のインフラ」のオーナーになれる

個人で「最先端の物流倉庫」や「巨大なデータセンター」に投資することは、事実上不可能です。しかし、REITを通じてなら、これらの「未来を支える不動産」の間接的なオーナーになることができます。
- 物流施設: Amazonに代表されるEコマース(ネット通販)の拡大に不可欠な、最新鋭の物流倉庫。
- データセンター: AI、クラウド、5Gの爆発的な成長を支える、デジタル経済の心臓部。
- ヘルスケア施設: 高齢化社会で需要が伸び続ける、介護施設や医療用ビル。
これらは、特定のハイテク企業の株を買うよりも、AIやEコマースといった「トレンド全体」の成長の恩恵を、より安定した家賃収入という形で受け取れる可能性がある、賢い投資先と言えます。
新NISA(ニーサ)と相性抜群
2024年から始まった新NISAは、REITのメリットを最大化する「最強のパートナー」です。
REITの最大の魅力である「高い分配金」は、通常、約20%の税金が引かれてしまいます。しかし、NISA口座で保有していれば、その分配金が全額非課税になります。
| 課税口座 | NISA口座 | |
|---|---|---|
| 年間分配金 | 10万円 | 10万円 |
| 税金(約20%) | - 2万円 | 0円 |
| 手取り | 8万円 | 10万円 |
受け取った分配金を非課税のまま再投資に回すことで、資産が雪だるま式に増える「複利効果」を最大限に活かすことができます。高い分配金を生み出すREITは、NISAの非課税メリットを最も享受できる資産の一つなのです。

株式・債券とは違う「第3の資産」
投資の基本は「分散」です。REITは、伝統的な資産である「株式」や「債券」とは異なる値動きをする傾向があります。
- 株式: 景気が良いと上がるが、不況に弱い。
- 債券: 景気に左右されにくいが、金利上昇やインフレに弱い。
- REIT: 不動産市況や賃料に連動する。
特に、経済が停滞する中で物価だけが上がる「スタグフレーション」のような厳しい環境では、株式と債券が同時に値下がりすることもあります。こうした局面でも、インフレに強いREITはポートフォリオ全体のリスクを低減させ、安定させる「守り」の役割を果たしてくれる可能性があります。
「現物不動産投資」の良いとこ取りができる
「不動産投資」と聞くと、アパートやマンション一棟を自分で購入・管理する「現物不動産投資」を思い浮かべるかもしれません。しかし、現物投資には管理が困難な固有のリスクが伴います。
REITは、これらのリスクを「変換」し、個人投資家にとって扱いやすい金融商品にしています。
- 流動性リスク: 現物不動産は売りたい時にすぐ売れず、数ヶ月かかることも。REITなら、株式と同じく数秒で売買可能です。
- 集中リスク: 現物では「その物件」が災害や入居者トラブルに見舞われると大打撃です。REITは数十〜数百の物件に分散投資しているため、リスクが極小化されます。
- 管理リスク: 現物では入居者募集、家賃回収、クレーム対応、修繕などを全て自分で行う必要があります。REITなら、これら全ての面倒な管理をプロが代行してくれます。
REITは、現物不動産投資の「管理が不能なリスク」を、「管理可能で流動性の高い市場リスク」へと変換してくれる、洗練された仕組みなのです。

+α:【おまけ】インフラファンドという選択肢
REITと似た仕組みで、「インフラファンド」という上場商品もあります。
これは、投資対象を不動産から「社会インフラ」に広げたものです。主に太陽光発電所などの再生可能エネルギー施設に投資し、その収益の多くは「国の固定価格買取制度(FIT)」に基づいています。
国が20年間といった長期間、固定価格での電力買取を保証するため、景気変動をほぼ受けない、極めて安定した収益が期待できるのが特徴です。REITと合わせて、安定したインカム収入を求める投資家にとって魅力的な選択肢となります。
まとめ:REITは多機能な戦略的ツール
REITは、単なる「高利回り商品」ではありません。
- インフレから資産を守り、
- 未来の成長分野に投資し、
- NISAで税効率を最大化し、
- ポートフォリオを安定させ、
- 現物不動産のリスクを回避する
という、複数の機能を持つ「戦略的な投資ツール」です。
これらの「隠れたメリット」を理解し、ご自身の資産運用にREITの組み入れを検討してみてはいかがでしょうか。
