雑記

【2025年版】Meta Quest 3S・PICO 4・Quest 3徹底比較!あなたに最適なVRヘッドセットはどれ?

2024年、コンシューマー向けVR(仮想現実)市場は、新たな次元へと突入しました。

単なるVR体験に留まらず、現実世界と仮想空間を融合させるMR(複合現実)が標準機能となり、各社から特色ある製品が次々と登場しています。特に市場を牽引するMeta社は、ハイエンドモデルの「Meta Quest 3」に加え、驚異的なコストパフォーマンスを誇る「Meta Quest 3S」を発表し、ラインナップを刷新しました。

これに対し、強力な対抗馬として独自の地位を築いているのが、ByteDance傘下のPICOが展開する「PICO 4」です。

この状況は、VRヘッドセットの購入を検討している消費者にとって、かつてないほど選択肢が豊富であると同時に、複雑な決断を迫るものでもあります

  • 圧倒的な価格で最新性能を手に入れられるエントリーモデルの王様「Meta Quest 3S」
  • 装着感とPCVR(PC接続VR)での快適性を追求したスペシャリスト「PICO 4」
  • 最高の没入体験を提供するプレミアムなオールインワン・フラッグシップ「Meta Quest 3」

これら3つのデバイスは、それぞれ明確な個性とターゲットユーザーを持っています。果たして、あなたの使い方、予算、そして求める体験に最も合致するのはどのモデルなのでしょうか?

本記事では、この問いに答えるべく、単なるスペックの羅列に終わらない、決定版となる徹底比較分析をお届けします。技術仕様から実際の装着感、スタンドアロンでのゲーム体験、PCVR性能、そして最も重要なソフトウェアエコシステムまで、あらゆる角度から深く掘り下げ、データとユーザーの声を基に、すべての読者が自分にとっての「完璧な一台」を見つけ出すための手助けをします。

第1章:一目でわかる!主要スペック&価格 徹底比較表

詳細な分析に入る前に、まずは3つのヘッドセットの主要な違いを一覧で確認しましょう。この表は、各デバイスの強みと弱みを瞬時に把握するための羅盤となります。特に、日本国内での実売価格、映像体験を左右するディスプレイとレンズ、そして長時間の使用に影響する重量バランスは、選択における重要な判断基準となるでしょう。

項目Meta Quest 3SPICO 4Meta Quest 3
日本での実売価格 (128GB)約37,800円~約47,200円~(販売終了)
日本での実売価格 (256GB/512GB)約53,200円~ (256GB)約59,400円~ (256GB)約75,000円~ (512GB)
プロセッサSnapdragon XR2 Gen 2Snapdragon XR2 Gen 1Snapdragon XR2 Gen 2
RAM8 GB LPDDR58 GB LPDDR48 GB LPDDR5
片目あたりの解像度1832 x 19202160 x 21602064 x 2208
PPD (画素密度)20 PPD20.6 PPD25 PPD
レンズタイプフレネルレンズパンケーキレンズパンケーキレンズ
視野角 (水平/垂直)96° / 90°105° / 105°110° / 96°
重量 (ストラップ込)514 g586 g515 g
重量バランス前方集中型前後均等型 (バッテリー後部搭載)前方集中型
IPD調整3段階切り替え式 (58/63/68mm)電動式・無段階 (62-72mm)ホイール式・無段階 (58-71mm)
パススルーフルカラー (4MPカメラ x2)フルカラー (16MPカメラ x1)フルカラー (4MPカメラ x2) + 深度センサー
コントローラーTouch Plus (リングレス)6DoF Haptic Controllers (リングあり)Touch Plus (リングレス)
ヘッドホンジャックなしなし (USB-Cアダプタ要)あり

第2章:決め手は「見え方」:映像体験の深掘り比較

VR体験の根幹をなすのは、視覚情報、すなわち「見え方」です。スペック表の数字が、実際の没入感にどう結びつくのか。ここでは、レンズ、解像度、視野角という3つの要素を徹底的に解剖し、各デバイスが提供する映像体験の質の違いを明らかにします。

2.1 レンズ技術の対決:Pancake vs. Fresnel

VRヘッドセットのレンズは、単なる映像の拡大装置ではありません。その種類が、視界全体の鮮明さや装着感、ひいては没入感そのものを根本から左右します。

Quest 3 & PICO 4 (パンケーキレンズ)

Quest 3とPICO 4は、次世代の「パンケーキレンズ」を採用しています。このレンズ技術の最大の利点は、視界の隅々まで高いシャープネスを維持できる「エッジ・トゥ・エッジ・クラリティ」です。従来のレンズで問題視されていた、中心から外れるほど映像がぼやける現象や、光のにじみ(グレア)が大幅に抑制されています。これにより、ユーザーは視線を動かすだけで、頭を大きく動かすことなく、自然に周辺の情報を認識できます。また、レンズ自体を薄く設計できるため、ヘッドセット前面のバイザー部分をスリム化できるという物理的なメリットももたらします。

Quest 3S (フレネルレンズ)

一方、Quest 3Sはコストを抑えるため、前世代機であるQuest 2と同じ「フレネルレンズ」を継承しています。これは同心円状の溝が刻まれたレンズで、軽量化と低コスト化に貢献しますが、光学的な妥協点も存在します。最も顕著なのは、鮮明に見える範囲、いわゆる「スイートスポット」が中心部に限定されることです。視界の端に目をやると、映像のぼやけや色ずれ(色収差)がはっきりと感じられます。このため、ユーザーは周辺のオブジェクトをクリアに見るために、視線移動だけでなく、意識的に頭をその方向へ向ける必要があり、これが没入感をわずかに削ぐ要因となり得ます。

このレンズ選択の違いは、単なる画質の問題を超え、ユーザーが仮想世界とどうインタラクションするかにまで影響を及ぼします。パンケーキレンズが提供する広大で寛容なスイートスポットは、より自然でストレスの少ない視覚体験を実現します。対照的に、フレネルレンズは、価格とのトレードオフとして、より意識的な頭の動きをユーザーに要求するのです。

2.2 解像度と精細感:PPDがもたらす「実在感」

解像度は、映像のきめ細やかさを決定づける指標です。しかし、VRにおいては、単純なピクセル数よりも「PPD(Pixels Per Degree)」、すなわち視野1度あたりに表示されるピクセル数が、体感的なシャープネスをより正確に表します。

Quest 3 (最高のシャープネス)

Quest 3は、片目あたり2064 x 2208ピクセル、そして25 PPDという、3機種の中で最も高い解像度と画素密度を誇ります。このスペックがもたらすのは、圧倒的な映像の精細さです。文字はくっきりと読みやすく、物体の輪郭は滑らかで、ピクセルの格子が見える「網戸効果(スクリーン・ドア・エフェクト)」は最小限に抑えられています。このため、高精細なゲームはもちろん、動画鑑賞や仮想デスクトップでの作業といった、テキストの可読性が求められる用途においても、他の2機種を凌駕する体験を提供します。

PICO 4 (高解像度)

PICO 4の解像度は片目あたり2160 x 2160ピクセルと、ピクセル数自体は非常に高いものの、PPDは約20.6です。これはQuest 3よりも低い値であり、体感的なシャープネスでは一歩譲りますが、旧世代のヘッドセットと比較すれば、依然として非常に高精細な映像を提供します。

Quest 3S (価格相応の妥協点)

Quest 3Sは、Quest 2と同一の片目あたり1832 x 1920ピクセル、20 PPDのディスプレイを搭載しています。この価格帯では十分な性能ですが、Quest 3と比較すると、特に細かいディテールやテキスト表示において、映像がやや「ざらついて」見えることは避けられません。

2.3 視野角(FOV)と没入感:「見る」範囲の違い

視野角(Field of View)は、ユーザーが一度に見渡せる仮想空間の広さを決定し、没入感の大きさに直結します。

Quest 3 (最も広い水平視野角)
Quest 3は水平110度、垂直96度という、3機種の中で最も広い水平視野角を確保しています。この広い周辺視野は、特に左右の動きが重要なゲームにおいて、より自然な感覚で周囲の状況を把握することを可能にし、仮想世界に「いる」という感覚を強めます。

PICO 4 (最も高い垂直視野角)
PICO 4の視野角は水平105度、垂直105度と、特に垂直方向の広さが際立っています。ユーザーレビューでは、この特徴が「まるで天井が取り払われたようだ」と評されており、頭を動かさずに上下の情報をより多く視界に収めることができます。これは、特定のユーザーや用途において、Quest 3の広い水平視野角よりも好まれる場合があります。

Quest 3S (最も狭い視野角)
Quest 3Sは水平96度、垂直90度と、最も視野が制限されています。これはQuest 2と同等であり、体験としては「ゴーグルを覗き込んでいる」感覚が最も強くなります。この「トンネル効果」は、仮想空間への完全な没入感をわずかに阻害する可能性があります。

第3章:スペック表には現れない重要点:装着感と快適性

VR体験は数分で終わるものではありません。ゲームやソーシャルVRに没頭すれば、1時間、2時間と装着し続けることも珍しくありません。だからこそ、スペック表の数字だけでは測れない「装着感」や「快適性」が、デバイスの満足度を左右する極めて重要な要素となるのです。

3.1 重量バランスの科学:PICO 4の圧倒的優位性

一見すると、単純な重量スペックはQuest 3(515g)がPICO 4(586g)よりも軽く、快適そうに見えます。しかし、これはVRの快適性における「スペックの罠」です。真に重要なのは、総重量ではなく、その「重量配分」にあります。

PICO 4のカウンターウェイト設計
PICO 4は、5300mAhの大容量バッテリーをヘッドストラップの後頭部側に配置するという、巧みな「カウンターウェイト設計」を採用しています。これにより、ヘッドセット全体の重量が前後にほぼ1:1で均等に分散されます。その結果、多くのユーザーレビューが証明するように、PICO 4は総重量が重いにもかかわらず、体感的な重さは非常に軽く、顔面への圧迫感がほとんどありません。これは長時間の使用において絶大なアドバンテージとなります。

Quest 3 & 3Sの前方集中型設計
対照的に、Quest 3と3Sは、バッテリーを含むすべての主要コンポーネントを前面のバイザー部分に集約しています。この「前方集中型」設計は、必然的にヘッドセットを前方に重くし、標準のストラップでは顔面、特に頬骨や額への圧迫感を引き起こしやすくなります。

この事実は、単にスペックシートの数字を比較するだけでは見えてこない、設計思想の根本的な違いを示しています。購入希望者が「Quest 3の方が70g軽いから快適だろう」と結論づけるのは、一次的な判断に過ぎません。二次的な現実として、多くのユーザーが長時間の快適性において、PICO 4の優れた重量バランスを高く評価しているのです。

3.2 標準ストラップと「隠れたコスト」

快適性の議論は、ストラップの問題と密接に関連しています。Quest 3と3Sに標準で付属する布製のストラップは、多くのユーザーから「長時間の使用には不十分」と見なされています。

このため、多くのQuestユーザーは、より快適な装着感を求めて、Meta純正の「Eliteストラップ」(約8,000円~16,000円)やサードパーティ製の高性能ストラップを追加購入することになります。これは、ヘッドセット本体価格に上乗せされる「隠れたコスト」、あるいは「Quest税」とも呼ばれる現象です。

一方で、PICO 4は購入時点から、このEliteストラップに相当する堅牢で調整機能に優れたストラップを標準装備しています。つまり、PICO 4は箱から出したその瞬間から、追加投資なしで高いレベルの快適性を提供してくれるのです。

3.3 瞳孔間距離(IPD)調整の使いやすさ

IPD(瞳孔間距離)をユーザーの目の幅に正確に合わせることは、クリアで立体感のある映像を得るために不可欠です。この調整機能の使いやすさにも、3機種間で明確な差があります。

Quest 3 (ホイール式・無段階)
Quest 3は、本体下部にあるホイールを回すことで、58mmから71mmの範囲でIPDをミリ単位で滑らかに調整できます。これは最も直感的で精密な方法であり、誰でも簡単に最適な設定を見つけることができます。

PICO 4 (電動式・無段階)
PICO 4も62mmから72mmの範囲で無段階調整が可能ですが、その操作はソフトウェアのメニュー内で行います。物理的な操作感はありませんが、装着したまま設定を変更できる利便性があります。

Quest 3S (3段階切り替え式)
Quest 3Sは、Quest 2と同様の3段階(58mm, 63mm, 68mm)の物理的な切り替えスイッチ方式にダウングレードされています。この3つの設定は多くのユーザーをカバーしますが、IPDがこれらの設定の中間に位置するユーザーは、完全にシャープな焦点を得るのに苦労する可能性があります。

第4章:心臓部を比較:処理性能とスタンドアロン体験

ヘッドセットの「頭脳」であるプロセッサは、スタンドアロン(PCに接続しない状態)での性能を決定づけます。グラフィックの美しさ、ロード時間、そして将来的にどのようなゲームが遊べるかまで、すべてはこの心臓部の性能にかかっています。

4.1 プロセッサの世代交代:Snapdragon XR2 Gen 2の衝撃

Quest 3 & 3S (Snapdragon XR2 Gen 2)
Quest 3と3Sは、Qualcommの最新チップ「Snapdragon XR2 Gen 2」を搭載しています。このチップは、前世代のGen 1と比較して、GPU(グラフィック処理ユニット)の性能が2倍以上に向上するという、驚異的なパフォーマンスの飛躍を遂げています。これにより、より複雑で美しいグラフィック、より高い解像度でのレンダリング、そして滑らかなフレームレートでのゲームプレイが、PCなしのスタンドアロン環境で実現可能になりました。

PICO 4 (Snapdragon XR2 Gen 1)
一方、PICO 4は、旧世代のQuest 2と同じ「Snapdragon XR2 Gen 1」を採用しています。このチップも依然として多くのVRゲームを快適に動作させる能力を持っていますが、性能面ではGen 2に大きく劣ります。これは、将来登場するであろう、より要求スペックの高いスタンドアロンゲームへの対応力に限界があることを意味します。

このプロセッサ選択は、単なる個々のデバイスの性能差以上の、市場全体に影響を及ぼす戦略的な意味合いを持っています。Metaが廉価モデルであるQuest 3Sにも最新のXR2 Gen 2を搭載したことで、同社の現行ハードウェアラインナップ全体で、非常に高い性能が新たな「標準」となりました。旧世代機であるQuest 2が段階的に市場から姿を消していく中で、ゲーム開発者はもはや古いチップの性能に縛られることなく、Gen 2のパワーを最大限に活用した、より高品質で複雑なゲームを開発できるようになります。これは、Questのソフトウェアエコシステム全体の進化を加速させる一手であり、プロセッサ世代が混在するPICOのラインナップでは容易に真似のできない、強力なアドバンテージとなっています。

4.2 Quest 3Sの隠れた利点:低解像度×高性能チップの可能性

ここで興味深いのが、Quest 3Sが持つ特異な立ち位置です。Quest 3Sは、Quest 3と同じ強力なXR2 Gen 2プロセッサを搭載しながら、ディスプレイの解像度は低く抑えられています。この組み合わせが、「パフォーマンスのパラドックス」とも言うべき現象を生み出す可能性があります。

理論上、同じゲームを動作させる場合、レンダリングするピクセル数が少ないQuest 3Sの方が、Quest 3よりもプロセッサへの負荷が軽くなります。これにより、特にグラフィック負荷の高い要求の厳しいゲームにおいて、Quest 3Sの方がより安定した、あるいはより高いフレームレート(FPS)を維持できる可能性があるのです。

これは、絶対的な映像の美しさよりも、ゲームプレイの滑らかさや応答性を最優先するハードコアなゲーマーにとって、隠れた利点となり得ます。彼らは、Quest 3の4K+ディスプレイを駆動するための巨大なレンダリング負荷を回避しつつ、最新チップの処理能力の恩恵を享受できるのです。

第5章:現実世界との融合:MR(複合現実)とパススルー機能

現代のVRヘッドセットは、もはや完全に閉じた仮想世界だけのデバイスではありません。本体のカメラを通して現実世界を映し出し、その上に仮想オブジェクトを重ねて表示するMR(複合現実)機能が、新たな体験の柱となっています。

5.1 パススルー品質:深度センサーの有無が分ける明暗

パススルー機能の品質は、MR体験のリアリティを大きく左右します。

Quest 3 (MRのリーダー)
Quest 3は、2つの4MP RGBカメラに加えて、専用の「深度プロジェクター」を搭載している点が最大の特徴です。この深度プロジェクターは、赤外線パターンを空間に投射し、部屋の壁や家具、床の凹凸を正確に3Dスキャンします。これにより、仮想のボールが現実の壁で跳ね返ったり、仮想のキャラクターが現実のソファに座ったりといった、物理的に整合性の取れたインタラクションが可能になり、MRの説得力を飛躍的に高めています。

Quest 3S (良好だが、最高ではない)
Quest 3Sも、Quest 3と同じ4MPのRGBカメラを搭載しており、Quest 2の白黒パススルーとは比較にならないほど高品質なフルカラーパススルーを実現しています。しかし、コスト削減のために深度プロジェクターは搭載されておらず、代わりに赤外線エミッターを使用しています。これにより、部屋の形状を大まかに把握することはできますが、Quest 3ほどの精密な3Dメッシュの生成はできず、MR体験のリアリティという点では一歩譲ります。

PICO 4 (機能的だが、主役ではない)
PICO 4は、1つの16MP RGBカメラでカラーパススルーを実現しています。機能としては十分であり、ユーザーレビューによればQuest 3と同等か、わずかに鮮やかさに欠ける程度の品質とされていますが、PICOのソフトウェアエコシステム全体として、MRはQuestほど中心的な機能とは位置づけられていないのが現状です。

5.2 操作性の改善:Quest 3Sのアクションボタン

興味深いことに、MR機能の使い勝手という点では、廉価モデルのQuest 3Sが兄貴分を上回る部分があります。Quest 3Sには、本体側面に物理的な「アクションボタン」が新たに追加されました。

このボタンを押すだけで、VR空間とMR(パススルー)空間を瞬時に、そして確実に切り替えることができます。これは、Quest 3で要求される、本体側面を2回タップするという、時として反応が不安定になりがちなジェスチャー操作への直接的な改善策です。ユーザーからのフィードバックを反映したこの小さな改良は、日常的な使いやすさにおいて、Quest 3Sに明確なアドバンテージを与えています。

第6章:遊べる世界が違う:ソフトウェアとコンテンツエコシステム

どれほどハードウェアが優れていても、その上で楽しめるソフトウェアがなければ意味がありません。特にスタンドアロンでの利用を主眼に置くユーザーにとって、コンテンツエコシステムの豊かさは、デバイス選択における最も重要な決定要因と言っても過言ではないでしょう。

6.1 Meta Questストア vs. PICOストア:ライブラリの壁

Metaの圧倒的優位性

Meta Questストアは、長年にわたる巨額の投資と開発者支援の末に築き上げられた、巨大で成熟したプラットフォームです。そのライブラリは、数千に及ぶゲームやアプリで満たされており、VRの代名詞とも言える『Beat Saber』や、壮大なスケールを誇る『Asgard's Wrath 2』、そして最新の話題作である『Batman: Arkham Shadow』(Quest 3/3Sの新規購入者には無料でバンドルされる)など、強力な独占タイトルを多数擁しています。

PICOの挑戦

一方、PICOストアも多くのクロスプラットフォームタイトルを取り揃えていますが、そのライブラリの規模はQuestストアに及ばず、VR市場を定義するような「キラーアプリ」や独占タイトルが不足しているのが現状です。

このソフトウェアの差は、ハードウェアのスペック差以上に、消費者の選択に決定的な影響を与えます。例えば、あるユーザーがPICO 4の優れた装着感をどれだけ気に入ったとしても、もし彼らが『Beat Saber』の最新ミュージックパックで遊びたい、あるいは『Batman: Arkham Shadow』の世界に没入したいと願うならば、選択肢はQuestシリーズしかありません。Metaが築き上げたこの「独占コンテンツという名の堀」は、ユーザーを自社のエコシステムに引き込む強力な武器であり、多くの一般消費者にとって、ハードウェアの優劣議論を二次的なものにしてしまうほどの力を持っているのです。

第7章:PCとの接続:PCVRマシンとしての実力

スタンドアロンVRヘッドセットのもう一つの重要な側面は、高性能なゲーミングPCに接続して、より高品質なVR体験を可能にする「PCVRマシン」としての能力です。このモードでは、デバイスの評価基準が大きく変わります。

7.1 PCVRにおけるPICO 4の強み

公平な競争の場
PCVRとして使用する場合、ヘッドセット本体のプロセッサ性能は無関係になります。なぜなら、すべての重い処理はPC側で行われるからです。したがって、比較の焦点は、装着感、光学性能、そしてPCからの映像ストリーミングの品質へと移ります。

PICOのアドバンテージ
この土俵において、PICO 4の強みが際立ちます。前述の通り、その優れた重量バランスと標準ストラップの快適性は、PCに繋いで何時間もプレイするような長時間のセッションにおいて、比類なきアドバンテージとなります。また、その特徴的な高い垂直視野角も、一部のPCVRユーザーから好まれています。レビューによれば、公式の「PICO Connect」や人気のサードパーティ製アプリ「Virtual Desktop」を介したPCVRの画質は非常に優れていると評価されています。

7.2 Quest 3のPCVR性能

もちろん、Quest 3もまた、非常に優れたPCVRヘッドセットです。その最大の武器は、隅々までシャープなパンケーキレンズと、広い水平視野角であり、これらはPCVRにおいても最高の視覚体験を提供します。

しかし、その主な弱点は、やはり標準状態での快適性です。長時間のPCVRセッションを快適に楽しむためには、多くの場合、高性能なストラップへの追加投資が必要となります。これにより、PCVRソリューションとしての総コストは、PICO 4よりも高くなる傾向があります。

第8章:【結論】あなたに最適なVRヘッドセットはこれだ!

これまでの詳細な分析を踏まえ、最終的にどのヘッドセットを選ぶべきか、具体的なユーザー像(ペルソナ)に基づいた、明確で実践的な推奨事項を提示します。

8.1 VR入門者・予算最重視なら:Meta Quest 3S

総括
約4万円という驚異的な価格で、最新のXR2 Gen 2プロセッサ、Questの膨大なソフトウェアライブラリへの完全なアクセス、そして高品質なカラーパススルー機能を手に入れることができます。Quest 3Sは、議論の余地なく、現在のVR市場におけるコストパフォーマンスの王様です。

理想的なユーザー
初めてVRの世界に足を踏み入れる人、家族や子供と一緒に楽しみたい人、あるいは厳しい予算内で妥協のない体験を求めるすべての人に最適です。

注意点
Quest 3と比較して、映像体験(シャープネス、視野角)が一段階劣ることは覚悟しておく必要があります。しかし、その価格差を考えれば、十分に許容できるトレードオフと言えるでしょう。

8.2 PCVRでの利用がメイン、または装着感を最優先するなら:PICO 4

総括
バッテリーを後部に配置した絶妙な重量バランスは、長時間の使用において最高の快適性を提供します。PCVR用途では本体プロセッサは無関係となり、その光学性能と視野角は非常に競争力があります。約47,000円からという価格も魅力的です。

理想的なユーザー
PCに接続して長時間プレイすることが主目的の、熱心なPCVRゲーマー。また、前方集中型のヘッドセットが引き起こす顔面への圧迫感に敏感なユーザーにも強く推奨されます。

注意点
スタンドアロンのソフトウェアライブラリはQuestに比べて大幅に貧弱です。PCに接続せず、本体だけでゲームを遊びたいユーザーには推奨できません。

8.3 最高のスタンドアロン体験とMRを求めるなら:Meta Quest 3

総括
最高のプロセッサ、最高のレンズ、そして最高のディスプレイを組み合わせた、一切の妥協を排した選択肢です。このカテゴリーで利用可能な、最高品質のスタンドアロンおよびMR体験を提供します。

理想的なユーザー
最新技術を求めるテクノロジー愛好家、旧世代機からの大幅なアップグレードを望む既存のVRユーザー、そしてプレミアムな価格(約75,000円~81,000円)と、より良いストラップへの追加投資を厭わない、最高のオールインワンパッケージを求めるすべての人。

注意点
3機種の中で最も高価であり、標準ストラップの快適性は価格に見合っているとは言えません。最高の体験のためには、ストラップのアップグレードがほぼ必須となります。

第9章:購入前に知っておきたい共通の注意点

どのVRヘッドセットを選ぶにせよ、購入前に理解しておくべき共通の注意点がいくつか存在します。これらは、安全で快適なVRライフを送るための重要な前提条件です。

  • プレイスペースの確保
    VRを安全に楽しむためには、手足を伸ばしても家具や壁にぶつからない、最低でも2m四方程度の開けた空間が必要です。特に動きの激しいゲームをプレイする場合、周囲の物や人、ペットとの衝突を避けるための配慮が不可欠です。
  • VR酔い
    一部のユーザーは、特にコントローラーのスティックで移動するタイプのゲームにおいて、乗り物酔いに似た症状(VR酔い)を経験することがあります。最初は移動の少ない、快適性の高いとされる体験から始め、こまめに休憩を取ることをお勧めします。
  • バッテリー寿命
    本稿で比較した3機種は、いずれもバッテリー駆動時間が平均して2時間から2.5時間程度です。長時間のプレイを想定している場合は、これでは不十分に感じるかもしれません。後付けのバッテリー付きストラップが、この問題を解決する一般的なソリューションとして広く利用されています。
  • 保証とサポート
    VRヘッドセットは精密な電子機器です。万が一の故障に備え、正規販売代理店や公式サイトから購入し、適切な保証を受けられるようにすることが重要です。特にPICOは、地域によってはサポート体制がMetaほど確立されていない可能性や、中古品の場合は保証が受けられないリスクがあるため注意が必要です。

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