ロブロックスはもう「子供の遊び場」ではない
「ロブロックス(Roblox)」と聞いて、まだ「子供向けのブロック遊びゲーム」だと思っていませんか?その認識は、2026年の今、大きく覆されようとしています。
現在、ロブロックスのデイリーアクティブユーザー(DAU)は1億1,100万人を突破。年間予約売上は約59億ドル(約8,800億円規模)に達し、一部の国家予算に匹敵する巨大な「デジタル経済圏」を形成しています。

本記事では、最新の2026年データを基に、ロブロックスが直面している経済的な転換点、若年層の驚くべき消費行動、そして私たち日本市場との深い関わりについて、ビジネスとテクノロジーの視点からわかりやすく解説します。
数字で見る「ロブロックス経済」の凄まじさ
まず、ロブロックスがどれほどの規模で成長しているのか、2025-2026年の主要データを見てみましょう。この数字は、ロブロックスが単なるエンタメを超え、社会インフラ化していることを示しています。
- 驚異的な売上成長: 2025年第3四半期の予約売上(Bookings)は、前年同期比70%増。
- 圧倒的な没入時間: ユーザーがプラットフォーム上で過ごした時間は、四半期だけで396億時間(前年比91%増)。
- クリエイターへの還元: 開発者への支払い総額は9ヶ月間で10億ドルを超え、トップ層は年間数十億円を稼ぎ出しています。
なぜ赤字でも「強い」のか?

決算書上では赤字が続いていますが、心配はいりません。これは優秀なエンジニアへの株式報酬や、AI・サーバーインフラへの巨額の先行投資が理由です。企業の「現金を稼ぐ力」を示すフリーキャッシュフロー(FCF)は年間10億ドルを超えており、財務的な体力は極めて潤沢です。
若者の消費を変える「トリート・マス」と「ブレインロット」
ロブロックス経済を理解する上で外せないのが、Z世代やα世代(アルファ世代)特有の消費心理です。インフレ時代の新しい経済感覚がここにあります。
① インフレが生んだ「トリート・マス(Treat Math)」
世界的なインフレでリアルな贅沢(車や家、高級ブランド)が遠のく中、若者たちは「デジタル空間での小さな贅沢(Small Indulgences)」に価値を見出しています。これを「トリート・マス(Treat Math)」と呼びます。
「現実で高い服は買えないけれど、アバターには数百円で素敵なデジタルファッションを着せてあげたい」――この心理が、ロブロックス内の通貨「Robux(ロバックス)」の流通を支えています。実際、Z世代の70%が「リアルで服を買う前に、アバターに着せて検討する」と回答しており、ロブロックスは「試着室」としての機能も果たしています。
② 無意味さが価値を生む「ブレインロット経済」
2025年に大ヒットしたゲーム『Steal a Brainrot』は象徴的です。一見無意味なAIキャラクターを集めるだけのこのゲームに、2,500万人以上が熱狂しました。
大人が「無意味(Brainrot)」と感じるものでも、コミュニティが面白がればそこに「価値」が生まれる。これは、NFTや暗号資産にも通じる高度な経済感覚を、子供たちが直感的に理解していることを示しています。
なぜ今、「日本市場」が熱いのか?
実は今、世界が注目しているのが日本市場です。かつては欧米ゲームの不毛の地と言われましたが、現在はロブロックスの成長エンジンとなっています。

- 日本市場の成長率: 2025年Q1の予約売上は前年比50%以上の成長。
- ユーザー数: モバイル版だけで月間470万人規模(セガや任天堂のアプリに匹敵)。
日本のアニメ・IPとの強力タッグ
講談社(『進撃の巨人』『ブルーロック』)、セガ(『龍が如く』)、サンリオなど、日本の強力なIP(知的財産)が続々と公式参入しています。
特に、日本の「同人文化(ファンによる二次創作)」とロブロックスの相性は抜群です。日本のクリエイターが作ったゲームが世界中で遊ばれ、外貨を稼ぐ「デジタル輸出」のプラットフォームになりつつあります。
ビジネスチャンス:広告は「見る」から「体験する」へ
企業のマーケティング担当者にとっても、ロブロックスは無視できないメディアになりました。
- プログラマティック広告の解禁: Amazon DSPなどを通じて、Web広告と同じ感覚でロブロックス内の動画広告枠を買えるようになりました。
- 「メディア」としての確立: 映画『ウィキッド』のキャンペーンは約80億インプレッションを記録。テレビCMに匹敵するリーチ力を証明しました。
これからの広告は、ただバナーを出すのではなく、ゲーム体験の中にブランドを溶け込ませる「没入型」が主流になっていきます。

今後の展望とリスク:AIと安全性の戦い
今後のロブロックスはどうなるのでしょうか? 2026年以降を見据えた注目ポイントは2つです。
① 生成AIによる「誰でもクリエイター」革命
「赤いスポーツカー」と入力するだけで、走る機能付きの3D車が作れる「4D生成AI」が登場しました。プログラミングができなくてもゲームが作れるようになり、クリエイターの裾野が爆発的に広がります。これにより、コンテンツの多様性がさらに増すでしょう。
② 安全性への挑戦と「顔認証」
一方で、児童の安全性に関する訴訟(MDL)や規制強化の動きもあります。これに対しロブロックスは「顔認証による年齢推定AI」を導入。匿名性を一部犠牲にしてでも、安全なプラットフォームへの脱皮を図っています。
短期的にはユーザー登録のハードルになりますが、長期的には「企業が安心して広告を出せる場所(ブランドセーフティ)」としての価値を高めるでしょう。
まとめ:ロブロックスは次世代の「社会インフラ」へ

ロブロックスは単なるゲームではなく、次の世代の「労働(クリエイション)」「消費(買い物)」「交流(SNS)」が融合した、新しい社会インフラ(ユーティリティ)へと進化しています。
- 経済: インフレに強い「トリート消費」の受け皿。
- 日本: 強力なIPとクリエイター文化が世界を牽引。
- 未来: AIによる制作の民主化と、厳格な安全性管理の両立。
ビジネスパーソンとしても、親としても、この巨大経済圏の動きから目が離せません。ロブロックスで起きていることは、数年後のインターネット全体の未来を予言しているからです。
参考文献:
1. Roblox Corporation Financial Reports (2025-2026)
2. 2026 Roblox Economic Analysis Report