2026年の大発会以降、東京市場で最も注目を集めた銘柄の一つが日東紡績(3110)です。1月5日から始まった怒涛の10営業日連続上昇は、単なる市場のアノマリー(1月効果)だけでは説明がつきません。
市場が気づき始めたのは、この会社が生成AIとハイエンドスマホの「物理的な限界」を解決できる、世界でほぼ唯一の企業であるという事実です。
本記事では、NvidiaのGPUや次世代iPhoneの心臓部を握る日東紡の強さと、株価急騰の裏にある「構造的な理由」を分かりやすく解説します。
なぜ日東紡なのか?AI・半導体市場の「ガラスの天井」
日東紡の株価が急騰している最大の理由は、同社が製造する「高性能ガラスクロス(スペシャルガラス)」の圧倒的なシェアと、その代替不可能性にあります。
半導体の「鉄筋」としての役割

半導体チップを載せる基板は、樹脂(レジン)とそれを補強する「ガラスクロス(ガラス繊維の布)」でできています。これは、建物の「鉄筋コンクリート」における鉄筋と同じ役割です。
しかし、AI用のGPU(NvidiaのBlackwellなど)は巨大で発熱も凄まじく、普通のガラスクロスでは熱で基板が反ってしまい、故障の原因になります。そこで必要になるのが、日東紡の技術です。
世界シェア90%超?「Tガラス」の衝撃
日東紡には、他社が真似できない2つの最強素材があります。
- Tガラス(Low-CTE):
- 特徴:熱膨張がシリコンチップ並みに小さい。
- 用途:NvidiaのAIサーバー、AppleのMチップなど。
- シェア:世界市場でほぼ独占状態(推定90%超)。これがないと高性能GPUは作れません。
- NEガラス(Low-Dk/Df):
- 特徴:電気信号を邪魔しない(低誘電率)。
- 用途:5G/6G通信、データセンターの高速通信。
- メリット:通信速度を上げ、消費電力を下げる「省エネ部材」としても注目。
Q. 日東紡の強みは何ですか?
A. NvidiaやAppleのハイエンド製品に不可欠な低熱膨張ガラスクロス(Tガラス)をほぼ独占供給している点です。製造難易度が高く、競合他社が参入できない高い技術障壁を持っています。
株価を押し上げる「2つの爆発的要因」
投資家が日東紡を再評価し、買いを入れている具体的な材料は以下の2点です。

① 強気の値上げ(プライシング・パワー)の確立
日東紡は2025年8月出荷分より、高性能ガラスクロスの20%値上げを実施しました。
通常、素材メーカーは立場が弱いことが多いですが、日東紡の場合は「代わりがいない」ため、顧客は値上げを受け入れざるを得ません。
工場がフル稼働している状態での20%単価アップは、利益率を劇的に押し上げます(オペレーティング・レバレッジ効果)。アナリストたちが目標株価を14,000円〜16,000円台へと引き上げているのは、この収益構造の変化を織り込んでいるからです。
② Appleも焦る「供給不足」と政府への直談判
供給不足(ショートージュ)は深刻です。報道によると、以下のような異例の事態が起きています。
- AI優先の煽り:NvidiaなどのAIサーバー向け需要が爆発し、スマホ向け(iPhoneなど)の供給枠が圧迫されている。
- Appleの異例な行動:Appleは供給確保のため、担当者を日本に派遣しただけでなく、日本政府(経済産業省など)に支援要請を行ったとされています。
- 解消時期:この供給不足は、2027年後半まで解消されない見通しです。
競合他社は作れないのか?(高い参入障壁)
「そんなに儲かるなら他社も作ればいい」と思うかもしれません。しかし、それができない理由があります。
| 参入障壁 | 詳細 |
|---|---|
| 1. 溶解技術の壁 | 特殊ガラスは超高温で溶かす必要があり、特殊な窯(炉)が必要です。 |
| 2. 紡糸技術の壁 | 髪の毛より細い4〜9ミクロンの糸を、断線させずに高速で巻き取る技術は「職人芸(暗黙知)」の塊です。 |
| 3. 品質認定の壁 | サーバー用部材は信頼性が命。一度採用されると変更には膨大なテストが必要で、実績のない他社製品への乗り換え(スイッチング)はほぼ不可能です。 |
| 4. 投資期間の壁 | 新しい炉を作るには最低2年かかります。今から投資しても、稼働するのは2028年以降です。 |
中国メーカーなども模索していますが、品質(気泡や均一性)の問題で、ハイエンド用途には使えていないのが現状です。
まとめ:日東紡は「半導体スーパーサイクル」の隠れた主役

日東紡の株価10連騰は、一過性のブームではなく、「AIインフラに不可欠な部材を独占している」というファンダメンタルズの再評価によるものです。
- Nvidia、Apple製品への必須部材(Tガラス)を独占。
- 20%の値上げによる利益構造の劇的な改善。
- 2027年まで続く構造的な供給不足。
これらの要素から、日東紡は単なる繊維・ガラスメーカーから、AI時代の「ゲートキーパー(門番)」へと変貌を遂げたと言えるでしょう。今後の四半期決算や、新たな増産投資のニュースには要注目です。
※本記事は投資の勧誘を目的としたものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。