2026年2月12日深夜、日本のホームセンター(HC)業界に大きな衝撃が走りました。業界大手の コーナン商事株式会社 が、同業中堅の アレンザホールディングス株式会社 (以下、アレンザHD)に対して株式公開買付け(TOB)を実施すると発表しました。

この提携は単なる買収ではなく、業界の勢力図を塗り替える歴史的な一手となります。本記事では、このTOBの概要から、業界に与える影響、投資家が知っておくべきポイントまでを詳しく解説します。
1. コーナン商事によるアレンザHDへのTOB概要
まずは、発表されたTOBの具体的な条件を整理しましょう。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年2月12日 |
| 買付価格 | 1株につき 1,465円 |
| 買付期間 | 2026年2月13日 ~ 3月30日 |
| 買付総額 | 約218億円(見込み) |
| プレミアム率 | 発表直前終値に対し 20.87%〜28.28% の上乗せ |
| 上場廃止 | 成立後、アレンザHDは上場廃止予定 |
今回のTOBの最大の特徴は、アレンザHDの親会社である バローホールディングス (バローHD)が引き続き50%超の株式を保有し続ける点です。コーナン商事とバローHDによる 共同経営 という非常に戦略的な形をとっています。
2. なぜ今?提携の背後にある「業界の地殻変動」
ホームセンター業界は現在、ドラッグストアやECサイト(Amazon、楽天など)との競争激化により、厳しい市場環境にあります。

業界トップへ躍り出る「規模の経済」
2025年2月期の売上高実績を見ると、コーナン商事は業界3位(約5,014億円)、アレンザHDは7位(約1,533億円)です。この両者が連合を組むことで、売上合計は 約6,547億円 となり、カインズやDCMホールディングスを抜き去り、実質的な 業界トップ に躍り出ることになります。
「食」と「住」の強力なシナジー
バローHDが親会社として残ることで、スーパーマーケットが持つ「食(来店頻度が高い)」と、コーナン・アレンザが持つ「住(専門性が高い)」が融合します。食品スーパーにホームセンターが併設されるモデルを全国展開することで、競合他社に対する圧倒的な差別化を狙っています。
3. 空白地帯を埋める全国ネットワーク
今回の提携により、両社の店舗網は極めて高い補完関係を築くことができます。

- コーナン商事: 大阪を中心とした近畿圏、首都圏、九州に強み。
- アレンザHD: 福島を中心とした 東北 、岡山拠点の 中国地方 、バロー地盤の 中部地方 に強固なドミナントを形成。
この「西のコーナン」と「東・中部のアルンザ」が手を結ぶことで、日本全国を網羅する巨大な物流・販売網が完成します。特に東北や中部地方のロードサイドにおける存在感は、今後飛躍的に高まるでしょう。
4. 投資家・株主への影響:配当と優待はどうなる?
アレンザHDの株主にとって、今回のTOBは大きな転換点となります。
株価のサヤ寄せ
発表直後の株式市場では、アレンザHDの株価はTOB価格である 1,465円 に引き寄せられる形で急騰しました。
配当の無配化と株主優待の廃止
TOB成立を前提として、アレンザHDは以下の変更を発表しています。
- 2026年2月期の期末配当: 従来の19円予想から 無配 へ。
- 株主優待制度: 2025年2月28日現在の株主への贈呈を最後に 廃止 。
これらはTOB価格の算出に織り込まれているため、株主は「配当や優待を待つよりも、TOBに応募して現金化する」という選択を迫られることになります。
5. 今後の展望:専門性とサステナビリティの時代へ
2026年以降、ホームセンター業界は「モノを売る場所」から「生活をサポートする拠点」へと進化が加速します。

- プロ業態(コーナンPRO)の強化: リフォーム需要の拡大に合わせ、職人向けの専門店舗をアレンザの地盤にも展開。
- PB商品の共通化: コーナンの高収益なプライベートブランド商品をアレンザの店舗に導入し、利益率を改善。
- DX(デジタルトランスフォーメーション): セルフレジや在庫予約システムなどのIT投資を共通化し、人手不足に対応。
まとめ:小売業界の新たな巨人の誕生
コーナン商事によるアレンザHDへのTOBは、単なる企業買収の枠を超えた 業界再編のトリガー です。218億円という巨額投資は、業界1位の座を確実にするための布石であり、消費者にとっても「食と住」が一体となったより便利な買い物体験の始まりを意味しています。
今後の焦点は、異なる文化を持つ3社(コーナン、アレンザ、バロー)がいかにスピーディーに統合を進め、具体的な相乗効果を出せるかにかかっています。ホームセンター業界の「新トップ時代」から目が離せません。