近年、AI開発競争が世界中で激化する中、日本の技術力を支える新たなプラットフォームが登場しました。
それが、さくらインターネットが提供する「高火力PHY(コウカリョクファイ)」です。
この記事では、政府からも認定を受けた国産AIスーパーコンピューティングサービス「高火力PHY」とは一体何なのか、その驚異的な性能、料金体系、そして競合となる海外サービスと比較した際の特徴まで、分かりやすく解説します。

出典:https://www.sakura.ad.jp/koukaryoku-phy/
「高火力PHY」とは?AI開発に特化した国産スパコン
「高火力PHY」は、一言で言うと「AI開発、特に大規模言語モデル(LLM)の学習に最適化された、超高性能な計算基盤(スパコン)を提供するクラウドサービス」です。
経済産業省から経済安全保障推進法に基づく認定を受けた国家的なプロジェクトでもあり、日本のAI技術の主権を守るための重要な役割を担っています。
最大の特徴は、サーバーを丸ごと1台専有できる「ベアメタル」形式で提供される点です。これにより、仮想化による性能劣化がなく、ハードウェアの能力を100%引き出すことが可能です。

ここがすごい!「高火力PHY」5つの主要な特徴
「高火力PHY」が多くの研究機関や企業から注目される理由は、以下の5つの特徴に集約されます。
1. 世界最先端のGPUを搭載した圧倒的パフォーマンス
AIの計算能力は、搭載されているGPU(画像処理装置)の性能に大きく左右されます。「高火力PHY」では、常に世界最高峰のGPUが採用されています。
- NVIDIA H100 Tensor Core GPU: サービス開始当初からの主力モデル。
- NVIDIA H200 Tensor Core GPU: H100からVRAM(GPUのメモリ)が大幅に増強され、より巨大なAIモデルに対応。
- NVIDIA B200 Tensor Core GPU: 2025年に提供開始予定の次世代モデル。性能と電力効率が飛躍的に向上。
これらのGPUを1サーバーあたり8基搭載しており、世界レベルのAI研究開発を可能にする計算パワーを提供します。
2. 性能を最大限に引き出すベアメタル環境
「高火力PHY」は、物理サーバーをユーザーが完全に占有できる「ベアメタル」で提供されます。
一般的なクラウドサービスのような仮想環境とは異なり、他のユーザーの影響を受けないため、常に安定した最高のパフォーマンスを発揮できます。OSのチューニングなども自由に行えるため、専門的なユーザーが性能を極限まで最適化するのに最適です。

出典:https://www.sakura.ad.jp/koukaryoku-phy/
3. 「国産」ならではのデータ主権と安心感
データがどこで管理されているかは、特に政府機関や大企業にとって極めて重要な問題です。「高火力PHY」は、すべてのデータが北海道石狩市にある国内データセンターで、日本の法律の下で管理されます。
これにより、海外の法律(米国のCLOUD法など)の影響を受けるリスクがなく、機密性の高いデータも安心して扱うことができます。
4. CO2排出量ゼロ!100%再生可能エネルギーで稼働
「高火力PHY」が稼働する石狩データセンターは、100%再生可能エネルギーで運営されています。
膨大な電力を消費するAI開発を行いながら、環境への負荷を実質ゼロにできる点は、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する現代の企業にとって非常に大きなメリットです。

5. グローバル企業を凌駕する戦略的な価格設定
これだけの高性能と付加価値がありながら、「高火力PHY」の価格は非常に戦略的です。長期契約を結ぶことで、海外の主要なクラウドサービス(AWS, Google Cloud, Azure)よりも大幅に安価に利用できます。
プロバイダー | 3年契約の月額料金(8x H100サーバーの場合) |
---|---|
さくらインターネット 高火力PHY | 約244万円 |
AWS EC2 (p5.48xlarge) | 約325万円 |
Google Cloud (a3-highgpu-8g) | 約609万円 |
Microsoft Azure (ND96isr_H100_v5) | 約563万円 (推定) |
※海外サービスの価格は為替やリージョンにより変動します。
この圧倒的なコストパフォーマンスは、政府の支援があるからこそ実現可能であり、国内のAI開発を強力に後押しします。

出典:https://www.sakura.ad.jp/koukaryoku-phy/
どのような用途で使われているのか?導入事例
「高火力PHY」は、すでに日本の重要機関やトップ企業で活用されています。
- 気象庁: 膨大な気象データをAIで解析し、台風の進路予測など、予報精度を向上させるために採用。
- Preferred Networks (PFN): 日本を代表するAI研究企業が、自社のLLM開発を加速させるために導入。
その他、製造業や医療分野など、様々な業界での活用が始まっています。
まとめ:日本のAIの未来を担う戦略的プラットフォーム
さくらインターネットの「高火力PHY」は、単なる高性能なクラウドサービスではありません。
- 世界トップクラスの計算性能
- ベアメタルによる最高のパフォーマンス
- 国産ならではのデータ主権と安全性
- 再生可能エネルギーによる環境貢献
- 海外勢を圧倒する価格競争力
これらの特徴を兼ね備えた、「高火力PHY」は、日本のAI研究開発を次のステージへと引き上げ、国際競争力を強化するための国家戦略的なプラットフォームと言えるでしょう。