VTuberグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLOR株式会社(5032)が、2025年12月10日に2026年4月期第2四半期の決算を発表しました。
表面上は大幅な増収増益に加え、通期業績予想の上方修正という「好決算」でした。しかし、翌11日の株式市場では売りが殺到し、株価は節目の5,000円を割り込む急落となりました。

なぜ、好材料が出たにもかかわらず株価は下がったのでしょうか?
本記事では、個人投資家が押さえておくべき「株価急落の3つの理由」と、決算の深層、そして今後の注目ポイントを分かりやすく解説します。
1. ニュースの概要:好決算と上方修正の内容
まずは、発表された実績と修正内容を整理しましょう。数字自体は非常に強力なものでした。
第2四半期累計(2Q)の実績
- 売上高: 263億2,600万円(前年同期比 +51.8%)
- 営業利益: 110億7,200万円(前年同期比 +63.8%)
- 経常利益: 110億8,100万円(前年同期比 +64.1%)
通期業績予想の上方修正
好調な進捗を受け、会社側は通期の見通しを引き上げました。
- 営業利益予想: 従来の「190億〜200億円」から「205億〜215億円」へ修正
2. なぜ下がった?株価急落の3つの理由
素晴らしい数字に見えますが、市場(投資家)は冷ややかな反応を示しました。その背景には、主に以下の3つの要因があります。

① 市場コンセンサス(期待値)への未達
今回の上方修正は、投資家の期待していた水準には届きませんでした。
- 会社側の新予想(経常利益): 210億円(レンジ中央値)
- 市場コンセンサス(IFIS予想): 約222億円
市場はもっと強気な数字を予想していたため、「会社予想は保守的すぎる」あるいは「成長ペースが期待ほどではない」と受け取られ、失望売り(ガッカリ売り)を誘いました。
② 「材料出尽くし」による利益確定
第1四半期(Q1)時点ですでに驚異的な好業績が出ていたため、「通期の上方修正はあるだろう」と多くの投資家が予想していました。
株価は決算発表に向けて上昇していましたが、実際に修正が発表されたことで「期待(噂)で買って、事実で売る」という典型的な動きが発生しました。
③ 四半期ベース(QonQ)での急激な減速
これが最も根深い懸念点です。第1四半期(5-7月)と第2四半期(8-10月)を比べると、勢いが落ちているように見えます。
- 第1四半期の営業利益: 約70億円(利益率44.4%)
- 第2四半期の営業利益: 約40億円(利益率約38.5%)

第1四半期が良すぎた反動もありますが、四半期単位で見ると利益が4割近く減っている計算になります。これが「成長の踊り場(ピークアウト)」懸念を招きました。
3. 会社側の説明:減速は「ポジティブな期ズレ」?
四半期ベースでの減速について、ANYCOLOR側はネガティブな要因ではないと説明しています。
- コマース(グッズ)の期ズレ: 本来第2四半期に計上されるはずだった大型施策(「ROF-MAO」や「If We Were」関連など)の売上が、生産スケジュールの調整により第3四半期(Q3)にずれ込んだとのことです。
- イベント収益:オンラインチケット販売が好調で、高い利益率を維持しています。
つまり、「売れなかった」のではなく「売上のタイミングが後ろにズレただけ」という説明です。これが事実であれば、第3四半期は再び高い数字が出るはずです。
4. 財務体質と今後の注目ポイント
圧倒的なキャッシュリッチ企業
- 自己資本比率: 79.0%(ほぼ無借金)
- 現預金: 前期末比で62億円以上増加
財務は鉄壁ですが、一方で「貯め込んだ現金をどう使うのか(配当、自社株買い、新規投資)」が見えにくいことも、買いの手が鈍る一因となっています。
次の決算(Q3)が運命の分かれ道
今回の株価下落は「成長力への疑念」がトリガーです。信頼を取り戻すためには、次の第3四半期決算(2026年3月頃発表予定)が重要になります。
- 売上のV字回復: 説明通り「期ズレ」分が計上され、売上が再加速するか?
- 海外事業(EN): 伸び悩んでいる海外事業に新たな起爆剤があるか?
まとめ:投資家はどう動くべき?

今回の急落は、企業の根本的な価値(ファンダメンタルズ)が崩壊したというよりは、「高すぎた期待値の調整」という側面が強いです。
- 長期目線: VTuber市場での圧倒的な地位や高い利益率は健在。PERなどの指標で割安感が出たところはチャンスになる可能性があります。
- 短期目線: 「成長鈍化」のイメージを払拭できるまでは、上値の重い展開が続くかもしれません。
結論
ANYCOLORは依然として超高収益企業ですが、市場は「さらなるサプライズ」を求めています。次の四半期で"本物の実力"が試されることになるでしょう。
※本記事は情報の提供を目的としており、投資の勧誘を目的とするものではありません。投資判断は自己責任にてお願いいたします。