中堅・中小企業の事業承継やM&A支援を手掛けるM&Aロイヤルアドバイザリー株式会社(コード:669A)が、2026年12月3日に東証グロース市場へ新規上場します。

設立からわずか5期目でのスピード上場であり、足元では急激な業績回復を見せています。想定発行価格は210円と手頃な水準に設定されていますが、既存株主による大規模な売出しや新株予約権の希薄化懸念といった需給面の課題も存在します。
本記事では、M&AロイヤルアドバイザリーのIPOに関する基本概要から事業の特徴、業績推移、バリュエーション、投資判断におけるポイントまでわかりやすく解説します。
M&Aロイヤルアドバイザリーの基本情報とIPOスケジュール
まずは、会社の基本プロファイルと今回のIPOの募集・売出条件を整理します。
| 項目 | 詳細内容 |
| 会社名 | M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社 |
| 証券コード/市場 | 669A/東証グロース市場 |
| 上場予定日 | 2026年12月3日 |
| 主幹事証券 | 野村證券 |
| 幹事証券団 | SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、丸三証券、東海東京証券、Jトラストグローバル証券 |
| 想定発行価格 | 210円 |
| 上場時発行済株数 | 33,450,000株 |
| 公募株数 | 50,000株 |
| 売出株数(OA含む) | 9,994,100株 |
| 想定吸収金額 | 約21.09億円(OA含む) |
| 想定時価総額 | 約70.25億円 |
同社は2021年11月に設立され、本社を東京都千代田区(丸の内トラストタワー本館)に置いています。従業員数は215名で、平均年齢31.6歳、平均年間給与は約1,348万円と高水準な報酬設計を採用しています。
仮条件の決定は2026年11月16日、ブックビルディング期間は11月17日から11月20日、公開価格決定日は11月24日の予定です。
ビジネスモデルの特色と競合優位性
M&Aロイヤルアドバイザリーの中核事業は、中堅・中小企業を主対象としたM&A仲介事業です。

売上高5億円以上の中堅案件に注力
一般的な中小向けM&A仲介会社は売上高1億〜3億円規模の小規模案件を多く手掛けますが、同社は売上高5億円以上の企業をターゲットとしています。累計成約実績のうち51.3%が売上高5億円以上の企業で占められており、1件あたりの取引規模が大きい点が強みです。
後継者不在に悩む中小企業の事業承継に加え、大手・上場企業の事業切り出し(カーブアウト)や、プライベート・エクイティ(PE)ファンドのイグジット(EXIT)支援など、難易度の高い案件にも対応しています。
分業制による業務プロセスの効率化

従来のM&A仲介では、1人のアドバイザーが受託から相手先開拓、条件交渉まで一貫して担うケースが主流でした。同社では以下の4プロセスを専門部署がサポートする分業体制を敷いています。
- 売り手候補の発掘(ソーシング)
- 買い手とのマッチング
- デューデリジェンスおよび実務支援
- 契約条件の交渉サポート
この仕組みにより、アドバイザーが顧客との合意形成に専念できる環境を作り、組織的な生産性向上を実現しています。
業績推移と収益構造の特徴
創業以来、急激な事業拡大を遂げており、直近の業績推移には明確な投資・収益サイクルが現れています。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
| 2023年10月期 | 12.57億円 | - | 2.15億円 | 1.55億円 |
| 2024年10月期 | 33.20億円 | 9.78億円 | 9.41億円 | 6.77億円 |
| 2025年10月期 | 40.11億円 | 3.08億円 | 2.96億円 | 3.12億円 |
| 2026年10月期(3Q累計) | 43.05億円 | 7.93億円 | 7.83億円 | 5.07億円 |
| 2026年10月期(通期予想) | 59.02億円 | 9.68億円 | 9.64億円 | 6.26億円 |
利益の一時的な落ち込みと急激な回復
2025年10月期は売上高が前期比20.8%増となった一方、営業利益は前期の9.78億円から3.08億円へと大幅に減少しました。これはアドバイザー人員を66名から104名へと急増させたことで、採用費や固定人件費が先行したためです。
しかし、2026年10月期第3四半期累計では売上高43.05億円、営業利益7.93億円を記録し、前年通期の実績を9か月で突破しました。増員したアドバイザーが戦力化し、先行投資の回収フェーズに入ったことを示しています。
成約単価と季節性のブレ
成約単価は案件規模によって変動します。2026年10月期の上半期は1件あたり平均約7,000万円でしたが、第3四半期は約5,200万円に低下しました。また、同社の売上は決算期末である第4四半期(8〜10月)に集中する傾向があり、四半期ごとの利益変動には留意が必要です。
バリュエーションとIPO株式の需給バランス
想定発行価格210円をもとに、指標面と需給面の特性を分析します。
指標面の割安感
2026年10月期の会社予想EPS(18.71円)に基づく予想PERは約11.22倍です。2027年10月期予想ベースでも約11.65倍と試算されています。
東証プライムに上場するM&A仲介大手各社(日本M&AセンターHD、M&A総研HD、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク等)のPERレンジが15〜22倍程度で推移しているのと比較すると、前期比47.2%増収を見込む成長企業としては割安なプライシングといえます。
需給面の懸念とロックアップ
一方で、需給構造には注意すべき要素がいくつかあります。
- 売出比率の偏重: 公募増資がわずか5万株(約1,050万円)にとどまり、売出株数はOAを含め約999.4万株に達します。創業メンバーや資産管理会社による保有株の現金化という側面が強く、市場への供給量が約21.09億円と中規模です。
- 新株予約権の潜在化: 発行済株式総数の23.86%に相当する潜在株式(7,979,578株)が存在します。権利行使価額は1株あたり20円と低く、上場後の潜在的な売り圧力として警戒されます。
- 180日間の厳格なロックアップ: 売出人および上位株主には上場後180日間のロックアップが課されており、株価上昇による解除条項(1.5倍など)はありません。そのため、上場直後に既存大株主から売却が出るリスクは抑えられています。
投資判断におけるメリットと留意すべきリスク
M&AロイヤルアドバイザリーのIPO参加にあたり、確認しておくべきポイントを整理しました。
ポジティブ要因(強み)
- 想定価格210円という低位株設計により、個人投資家が買いやすい
- 成約単価の高い売上高5億円以上の中堅企業をターゲットにしている
- 予想PER約11.22倍と、上場同業他社に比べて割安感がある
- 手元資金が豊富で実質無借金と財務健全性が高い
ネガティブ要因(リスク)
- 公募が極端に少なく既存株主の売出しが大半を占めるため、初値買いの熱量が削がれやすい
- 潜在株式比率が約23.86%と高く、中長期的な希薄化懸念がある
- 労働集約型ビジネスのため、人材採用の遅れやアドバイザーの離職が成長鈍化に直結する
- 中小M&Aガイドラインの改訂など、業界に対するコンプライアンス規制強化の動向
まとめと今後のチェックポイント

M&Aロイヤルアドバイザリー(669A)は、先行投資による増員効果が顕在化し、急拡大を続けるM&A仲介の注目IPOです。
株価指標面では割安感があり低位株としての手軽さもある一方、売出し中心のオファリングと潜在株の多さが需給の重しとなります。そのため初値が何倍にも跳ね上がる展開は想定しにくいものの、手堅い初値形成が期待されます。
まずは11月16日の仮条件が想定価格(210円)に対して強気・弱気のどちらに設定されるかを確認し、参加判断を行いましょう。上場後もアドバイザーの採用ペースと1人あたり成約件数の推移が重要な観察ポイントとなります。