昭和産業株式会社は2026年2月20日、新たな長期ビジョン「SHOWA VISION 2035」および「中期経営計画 26-29」の策定に合わせ、株主還元方針の劇的な強化を発表しました。

今回の変更は、2027年3月期(2026年度)から適用され、配当性向40%またはDOE(自己資本配当率)3.0%のいずれか高い方を基準とするという、食品セクターの中でも極めて意欲的な内容となっています。本記事では、この新方針の背景と、投資家が注目すべきポイントを分かりやすく解説します。
配当性向40%またはDOE 3%という画期的な還元基準
今回の発表で最も注目すべきは、還元指標の「二段構え」です。これまでの「配当性向35%以上かつDOE 2.0%以上」という目標をさらに引き上げ、以下の基準を導入しました。
- 連結配当性向 40%:利益成長の成果をよりダイレクトに株主へ分配する指標
- DOE(自己資本配当率) 3.0%:利益の増減に左右されず、純資産に対して一定の配当を維持する指標
この「いずれか高い方」を選択する仕組みにより、好業績時には利益成長を享受でき、一方で一時的な減益局面でも配当の安定性が保たれるという、株主にとって非常にバランスの良い構造になっています。
なぜ今、昭和産業は還元強化に踏み切ったのか
今回の還元方針変更の背景には、東京証券取引所が求める「資本コストや株価を意識した経営」への強い危機感と対応があります。

同社の株価純資産倍率(PBR)は、2025年2月時点において0.76倍と解散価値である1倍を恒常的に下回っていました。製粉や油脂といった成熟事業を主軸とする同社にとって、低PBRの脱却は喫緊の課題であり、今回の還元強化は「資本効率を重視する姿勢」を市場に明確に示すための戦略的な一手といえます。
DOE 3.0%導入がもたらす「配当の安定性」と「経営の規律」
DOE 3.0%という下限設定は、投資家にとって二つの大きなメリットがあります。
配当の安定性
当期純利益が変動しても、自己資本を基準に配当が決まるため、大幅な減配リスクが抑制されます。これは、従来の「累進配当」方針をより定量的に強化したものです。
経営への規律付け
自己資本を不必要に溜め込むことはDOEを低下させる要因となるため、経営陣に対して「過剰な内部留保を避け、資本を有効活用する」というガバナンス上のプレッシャーとして機能します。
資本効率の向上とPBR 1倍回復へのロードマップ
昭和産業は、還元を強化するだけでなく、その原資となる「稼ぐ力」の向上も掲げています。長期ビジョン「SHOWA VISION 2035」では、以下の高い財務目標を設定しました。

- ROE(自己資本利益率):9.0%以上(2035年度)
- ROIC(投下資本利益率):8.0%以上(2035年度)
ROEが8%を超える水準で推移すれば、配当性向40%を適用した際にDOEは自動的に3.2%程度となります。つまり、今回のDOE 3.0%という下限設定は、同社が目指す健全な資本効率と論理的に整合しており、収益力の向上と株主還元が「車の両輪」として機能する設計になっています。
市場の反応と今後の注目点
2026年2月20日の発表後、市場は概ねポジティブに反応しており、株価は上昇トレンドを維持しています。アナリストからも「株主還元に応える姿勢」が肯定的に評価されており、レーティングの引き上げや目標株価の増額も見られます。
今後の注目点は、以下の3点です。

- 新経営体制による実行力:2026年からの新体制下で、掲げた利益目標が着実に達成されるか
- 事業ポートフォリオの変革:高付加価値なファインケミカルや海外事業の成長速度
- 機動的な自己株式取得:PBR 1倍回復に向け、配当以外にどの程度の自社株買いが組み合わされるか
まとめ:新生・昭和産業が目指す株主価値の最大化
昭和産業が打ち出した「配当性向40%またはDOE 3.0%」という新方針は、日本の穀物加工業界における新たなベンチマークとなる可能性を秘めています。
単なる「安定配当」から一歩踏み出し、資本効率の最適化を経営の中心に据えた同社の姿勢は、長期投資家にとって魅力的な選択肢となるでしょう。PBR 1倍回復という目標に向け、同社の構造改革がどのように実を結ぶのか、今後の展開から目が離せません。