2026年2月12日の東京株式市場で、資生堂(銘柄コード:4911)の株価が急騰しました。前日比で一時14%を超える上昇を見せ、約1年3カ月ぶりとなる高値圏へと浮上。市場を驚かせたのは、2期連続の最終赤字という「膿」を出し切り、2026年12月期に420億円の最終黒字を見込むという鮮やかな復活シナリオです。

本記事では、なぜ資生堂がこれほどまでに市場から再評価されたのか、その背景にある構造改革の全貌と今後の展望を詳しく解説します。
1. 2025年12月期決算の「攻めの赤字」とは?
表面上の数字だけを見ると、2025年12月期は406億円の最終赤字となりました。しかし、この数字には将来の成長に向けた戦略的な判断が隠されています。
米国事業の減損処理によるリスク排除

赤字の主因は、米国のスキンケアブランド「ドランク エレファント」に関連する約468億円の減損損失を計上したことです。これは会計上の処理であり、キャッシュの流出を伴わないものです。負の遺産を早期に処理することで、次期以降の利益が出やすい体質を整えました。
本業の「コア営業利益」は市場予想を上振れ
一方で、一時的な要因を除いた本業の稼ぐ力を示す「コア営業利益」は445億円(前期比22.4%増)と、市場予想を大きく上回って着地しました。4期ぶりに期初計画を達成した事実は、資生堂の収益構造が着実に改善していることを証明しています。
2. 2026年度:420億円黒字達成への3つの柱
資生堂が掲げた2026年12月期の業績予想は、売上高9,900億円、最終利益420億円という非常に力強いものです。
| 指標 | 2025年12月期(実績) | 2026年12月期(予想) | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,699億円 | 9,900億円 | +2.1% |
| コア営業利益 | 445億円 | 690億円 | +54.8% |
| 当期純損益 | △406億円 | 420億円 | 黒字転換 |
| 年間配当 | 40円 | 60円 | +20円増配 |
① 構造改革「アクションプラン2025-2026」の果実
2026年度には、これまで断行してきた構造改革により250億円の利益押し上げ効果を見込んでいます。

- 組織の効率化:間接部門の統合や人員適正化による固定費の削減。
- R&Dの集約:アジアの研究拠点を日本へ統合し、開発スピードとコスト効率を向上。
② 日本事業の強靭化とインバウンドの変質
日本国内では、高機能スキンケアブランド「エリクシール」や「SHISEIDO」が好調を維持しています。中国人旅行者によるインバウンド需要に頼り切るのではなく、国内のローカル需要をしっかりと掴んでいる点が現在の強みです。
③ ブランドの「選択と集中」

資生堂は、収益性の高い8つの主力ブランドに投資を集中させる方針を明確にしています。これにより、利益率(コア営業利益率)を2026年度に7%、中長期的には10%へと引き上げる計画です。
3. 市場(投資家)が資生堂を評価したポイント
株価の急騰は、単なる買い戻しではなく、経営陣の「実行力」に対する信頼の表れと言えます。
- コンセンサスの上振れ:2026年度の利益予想が、アナリストたちの事前の期待値を約100億円も上回ったこと。
- 積極的な株主還元:最終赤字の期でも配当を維持し、次期には20円の増配(年間60円)を発表したこと。
- テクニカル面の改善:3,000円の節目を突破し、中長期的な上昇トレンドへと転換したこと。
4. 今後の注目点とリスク
資生堂の「ルネサンス(再生)」は本物か。今後、投資家は以下のポイントを注視することになります。
- 中国市場の不透明感:中国経済の停滞に対し、ブランド価値を落とさずに在庫適正化を進められるか。
- 改革の進捗確認:四半期ごとの決算で、250億円のコスト削減効果が計画通りに現れているか。
- 次世代成長分野への投資:再生医療やデジタルカウンセリングなど、2030年に向けた新領域での成果。
結論
資生堂の株価上昇は、過去の課題に正面から向き合い、抜本的な構造改革を断行した結果と言えます。2026年の420億円黒字という目標は、投資家に対する強いコミットメントです。

同社は今、不採算事業の整理を終え、収益性を高めながら再成長するステージに立っています。日本を代表するグローバル・ビューティー企業として、その実行力が試されるフェーズが始まります。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を意図するものではありません。投資に関する最終決定はご自身の判断で行ってください。