2025年11月4日、ECバックオフィスSaaSの国内最大手、NE株式会社(証券コード:441A)が東証グロース市場に新規上場します。
このIPOは、人気ECサイト「Hamee」を運営するHamee株式会社(3134)から、主力のSaaS事業が「スピンオフ」という形で独立する、国内では非常に珍しいケースとして大きな注目を集めています。
「NEってどんな会社?」
「Hameeからのスピンオフってどういうこと?」
「このIPO、結局"買い"なの?」
この記事では、そんな疑問を解消するために、NE株式会社の事業内容、業績、そしてIPOの注目ポイントから初値予想まで、投資判断に必要な情報を分かりやすく解説します。

NE株式会社とは? - EC業界を支える黒子
NE株式会社は、一言でいうと「ネットショップ運営者の面倒な裏側業務を自動化するシステム」を提供している会社です。
主力製品である「ネクストエンジン」は、複数のネットショップ(楽天市場、Amazon、自社サイトなど)の注文管理や在庫連携を自動で行うことができる、EC一元管理システムです。
- 業界シェアNo.1の実績
- 導入企業は6,500社以上
- ネクストエンジン経由の年間流通総額は1兆円超
この圧倒的な実績が示す通り、多くのEC事業者にとって「なくてはならない」存在となっており、日本のEC市場を裏側から支える重要な役割を担っています。

IPOの基本情報
まずは、NE株式会社のIPOに関する基本情報を確認しましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
証券コード | 441A |
上場市場 | 東証グロース |
上場日 | 2025年11月4日(火) |
想定発行価格 | 730円 |
想定時価総額 | 約120.5億円 |
主幹事証券 | みずほ証券 |
公募株数 | 500,000株 |
売出株数 | 0株 |
特筆すべきは、既存株主による「売出」がゼロである点です。これは、IPOによる資金をすべて会社の成長投資に充てるという、ポジティブな姿勢の表れと捉えられます。
NE株式会社の強みと魅力(投資のプラス材料)
NE社のIPOには、投資家にとって魅力的なポイントがいくつもあります。
圧倒的な市場シェアとブランド力
EC一元管理システムの分野でシェアNo.1という地位は、強力な参入障壁となります。長年の実績と信頼は、他社が簡単に真似できない大きな強みです。

出展:https://next-engine.net/about-nextengine/?nelink=g-navi
安定・高収益のSaaSビジネス
「ネクストエンジン」は、一度導入すると業務フローに深く組み込まれるため、解約率が0.85%と非常に低いのが特徴です。これにより、安定的かつ継続的な収益が見込めます。また、営業利益率30%超という高い収益性も魅力です。
成長し続けるEC市場
日本のEC市場は今後も拡大が予測されており、NE社の事業にとって強力な追い風が吹いています。
割安な価格設定?
想定発行価格(730円)から計算されるPER(株価収益率)は約12.1倍。これは、類似のSaaS企業と比較して割安な水準であり、株価の上昇余地が期待されます。
注意すべきリスクと懸念点(投資のマイナス材料)
一方で、今回のIPOには特有のリスクも存在します。
最大のリスク:スピンオフに伴う「売り圧力」
今回のIPOの最大の特徴であり、最大のリスク要因です。
通常、親会社から独立する場合、親会社が大株主として残り、株価が安定するようにロックアップ(売却制限)がかかります。しかし今回は、親会社Hameeが保有するNE株のすべてが、Hameeの株主に現物配当として分配されます。
これにより、上場日には「NE株が欲しかったわけではない」というHamee株主が大量に生まれます。彼らが受け取ったNE株をすぐに売却する可能性があり、上場直後に大規模な売り圧力が発生するリスクがあります。
来期は「減益」予想
会社が発表した2026年4月期の業績予想では、売上は伸びるものの、営業利益は前期比で3.3%の減少を見込んでいます。これは、本社移転や人件費増など、独立後の成長に向けた先行投資が理由ですが、市場からはネガティブに捉えられる可能性があります。
業績の推移
過去の業績は非常に好調です。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 |
---|---|---|---|
2024年4月期 | 37.6億円 | 15.3億円 | 40.6% |
2025年4月期 | 39.2億円 | 15.1億円 | 38.7% |
2026年4月期(予想) | 42.0億円 | 14.6億円 | 34.9% |
安定して売上を伸ばし、驚異的な営業利益率を維持していることが分かります。来期の減益予想は気になりますが、その背景が成長投資であることを理解しておくことが重要です。

出展:https://next-engine.net/about-nextengine/?nelink=g-navi
まとめ:初値予想と投資戦略
NE株式会社のIPOをまとめると、以下のようになります。
- ポジティブ要因: 業界No.1の事業基盤、高収益SaaSモデル、割安な価格設定
- ネガティブ要因: スピンオフに伴う上場直後の強烈な売り圧力リスク、短期的な減益予想
短期的な株価は需給の乱れで不安定、しかし事業内容は優良で、長期目線では魅力的
上場直後は、スピンオフによる売り圧力で株価が伸び悩む、あるいは公募価格を割れる展開も十分に考えられます。そのため、初値だけを狙う短期的な投資には高いリスクが伴います。
一方で、NE社がEC支援のマーケットリーダーであり、高い収益性を持つ優良企業であることは間違いありません。もし、上場直後の売りで株価が不当に安くなった場面があれば、そこは長期投資家にとって絶好の買い場となる可能性があります。
短期的な値動きに惑わされず、企業のファンダメンタルズに着目できる投資家にとって、非常に面白いIPO案件と言えるでしょう。