Bambu Lab P1S 徹底レビュー:3Dプリンター市場を驚愕させた本当の理由

Bambu Lab P1S 徹底レビュー:3Dプリンター市場を驚愕させた本当の理由

2025年9月23日

「3Dプリンターは、もはや難しい趣味の道具ではない」

Bambu Lab P1Sの登場は、市場にそう宣言しました。これまで当たり前だった面倒な調整や試行錯誤の時間を過去のものとし、まるで最新のスマート家電を使うかのように、誰でも「箱から出してすぐ」に高品質なモノづくりを始められる。

この体験こそが、P1Sが「ゲームチェンジャー」と呼ばれる理由です。

この記事では、詳細な技術分析に基づき、Bambu Lab P1Sがなぜこれほどまでに市場を席巻したのか、その核心に迫ります。ライバル機種との哲学的な違いから、実際に使う上で知っておくべき欠点まで、忖度なしで徹底的に解説します。

この記事を読み終える頃には、P1Sがあなたにとって最高の投資となるか、あるいは他の選択肢を探すべきかが明確になっているはずです。

Bambu Labの製品として初心者向けにBambu Lab A1 miniについても記事を執筆しているのでこちらも参考にしてみてください。

なぜP1Sは「革命」なのか?成功を支える3本の柱

P1Sの成功は、単なるスペックの高さだけではありません。それは、3Dプリンティングの体験全体を再設計した、見事な「製品哲学」にあります。

1. 速度と品質の両立:「とにかくうまくいく」印刷体験

P1SはCoreXY方式と高度な振動補正技術により、最高500mm/sという驚異的な速度と、美しい仕上がりを両立させます。しかし、本当の価値は速度そのものではなく、ユーザーが何もしなくても高品質な印刷が手に入ることです。

印刷開始前に実行される全自動ベッドレベリングとキャリブレーションが、失敗の最大の原因だった第一層の定着問題をほぼ完全に解消。ユーザーは面倒な調整から解放され、「印刷」ボタンを押すだけで良いのです。

2. 15分の約束:開封から創造までの最短ルート

「セットアップに15分」というBambu Labの約束は、巧みなユーザー体験デザインの現れです。

輸送用のネジを数本外し、簡単な部品を取り付けるだけ。従来のキットのように数時間も格闘する必要はありません。

このストレスフリーな最初の体験は、「このプリンターは信頼できる」という強い第一印象をユーザーに与え、その後のモノづくりへの期待感を高める重要な役割を果たしています。

3. AMS:多色印刷を誰もが使える機能へ

[AMSユニットと多色印刷された作品の画像]

オプションのAMS(Automatic Material System)は、P1Sを単なる高速プリンターから、表現力豊かなクリエイティブツールへと昇華させます。最大4色(連結で16色)のフィラメントを自動で切り替えることで、これまで専門知識が必要だった多色・多素材印刷のハードルを劇的に下げました。

技術的深掘り:P1Sの心臓部

P1Sの強みは、各コンポーネントが「高速・高品質な印刷」という一つの目的のために、いかに巧みに統合されているかにあります。

  • モーションシステム (CoreXY): プリントヘッドを軽量に保ち、高速な動きと高い精度を実現します。
  • 押出システム (ダイレクトドライブ): TPUのような柔軟な素材でも確実にフィラメントを送り込みます。
  • ホットエンド (オールメタル): 最高300℃まで対応し、PLAやPETGはもちろん、ABSやナイロンといったエンジニアリングプラスチックも扱えます。
  • エンクロージャー (筐体): 標準装備の箱型ボディが庫内温度を安定させ、ABSのような反りやすい素材の印刷成功率を高めます。同時に、動作音や臭いを軽減する効果もあります。

これらのパーツは個々に目新しいものではありません。しかし、Bambu Labはこれらを強力なソフトウェア(Bambu Studio)と緊密に連携させることで、ハードウェアの性能を最大限に引き出すことに成功したのです。これこそが、スペックシート上は似ていても競合製品が多くの調整を必要とするのに対し、P1Sが「とにかくうまくいく」理由です。

AMSは買うべきか?革命の光と影

AMSは非常に魅力的ですが、導入前に理解すべきトレードオフが存在します。

AMSのメリット

  • 多色・多素材印刷: 作品の表現力が飛躍的に向上します。
  • 利便性の向上: 複数のフィラメントをセットしておけば、スライサー上で選ぶだけで交換の手間なく印刷を開始できます。
  • フィラメント切れの自動バックアップ: 同じ種類のフィラメントをセットしておけば、1つ目がなくなると自動で2つ目に切り替わります。

AMSのデメリット

  • フィラメントの浪費: 色を切り替えるたびに、ノズル内の古い色を排出(パージ)する必要があり、多くのプラスチックごみ(通称「ウンチ」)が発生します。これはコストと環境の両面で大きな欠点です。
  • スプールの互換性問題: AMSはBambu Lab純正や標準的なプラスチックスプールに最適化されており、段ボール製スプールや特殊なサイズのスプールは、詰まりの原因になったり、物理的に収まらなかったりします。
  • 印刷時間と複雑性の増加: 色の切り替えとパージに時間がかかるため、多色印刷は単色に比べて大幅に時間が長くなります。

多色印刷が主な目的であれば、AMSは素晴らしい投資です。

しかし、単色の機能部品を主に作るユーザーにとっては、追加コストやフィラメントの浪費、潜在的なトラブルを考えると、必ずしも必要とは言えません。

欠点の正直な評価:P1Sと暮らすということ

P1Sは素晴らしいプリンターですが、完璧ではありません。購入前に知っておくべき現実的な欠点を見ていきましょう。

  • 騒音: 高速で動作するため、ファンやモーターの音はかなり大きいです。静かなリビングよりも、作業部屋やガレージへの設置が望ましいでしょう。
  • 時代遅れのUI: 本体の画面はモノクロの非タッチスクリーンです。操作のほとんどはPCやスマホアプリで行うため実用上の問題は少ないですが、見た目は古風です。
  • おまけ程度のカメラ: 内蔵カメラは低画質・低フレームレートで、印刷が失敗していないかを確認する最低限の機能です。綺麗なタイムラプス動画は期待できません。
  • クローズドなエコシステム: 修理や改造の自由度は低く、Apple製品のようにメーカーが提供する体験に身を任せるスタイルです。自分で機械をいじりたい「改造家」には向きません。

ライバル対決:市場におけるP1Sの立ち位置

特徴Bambu Lab P1SCreality K1 シリーズPrusa MK4
コンセプト家電のような手軽さ (Appleモデル)改造も楽しめるオープン性コミュニティと信頼性 (PC/Androidモデル)
開封直後の体験◎ プラグアンドプレイ△ 調整が必要な場合も○ 簡単設定(キット版は要組立)
ソフトウェア◎ 統合されていて簡単○ 柔軟性が高い(Klipperベース)○ オープンで情報が豊富
修理・改造△ ブラックボックスに近い◎ 改造しやすい◎ ユーザーフレンドリー
理想のユーザークリエイター改造家学習・研究者
  • vs Creality K1: K1はスペック上P1Sに似ていますが、よりオープンで改造しやすいのが魅力です。しかし、ソフトウェアの完成度や「箱出し」での信頼性はP1Sが優れています。「手間なく安定して使いたい」ならP1S、「自分でいじり倒したい」ならK1が良いでしょう。
  • vs Prusa MK4: Prusaはオープンソース思想と強力なコミュニティ、長期的な信頼性が魅力です。「自分で全てを把握し、修理しながら長く使いたい」という思想に共感するならMK4。家電のような手軽さと統合された体験を求めるならP1Sです。

Bambu Lab P1Sは誰のためのプリンターか?

P1Sを強く推奨する人

  • 3Dプリンター初心者: 難しい設定に悩まされず、すぐに「つくる楽しさ」を味わいたい人。
  • 多忙なクリエイターやホビイスト: アイデアを素早く、確実に形にしたい人。トラブルシューティングではなく、創造に時間を使いたい人。
  • 小規模ビジネスオーナー: 試作品製作や小ロット生産の効率を劇的に上げたい人。

他の選択肢を検討すべき人

  • 改造マニア: プリンターを分解・改造・アップグレードすること自体を楽しみたい人。(→Creality K1やPrusa MK4へ)
  • オープンソース支持者: クローズドなシステムやクラウド連携に抵抗がある人。(→Prusa MK4へ)
  • 絶対的な静音性を求める人: リビングなど静かな環境に設置したい人。

まとめ

Bambu Lab P1Sは、単に速くて高品質な3Dプリンターではありません。ハードウェア、ソフトウェア、そしてAMSというオプションまでがシームレスに統合され、3Dプリンティングの複雑さをユーザーから見えなくした、最初のコンシューマー向け製品です。

それはユーザーを面倒な作業から解放し、「創造」という最も価値のある活動に集中させてくれます。このユーザー体験(UX)の革新こそが、P1Sが市場を再定義した本質的な理由なのです。

もしあなたが「つくること」そのものを楽しみたいのであれば、Bambu Lab P1Sは、2025年現在、最も賢明で満足度の高い投資の一つになるでしょう。

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