2027年1月から、私たちの給与明細に関わる重要な税制改正が実施されます。「防衛費のための増税」と聞くと不安になりますが、同時に「復興特別所得税」の税率が下がるというニュースも耳にします。
「結局、手取りは減るの?変わらないの?」
「いつまで払う必要があるの?」
この記事では、2025年末に決着した税制改正大綱に基づき、2027年からの所得税の仕組みと、家計への影響をわかりやすく解説します。
30秒でわかる!今回の改正ポイントまとめ
忙しい方向けに、今回の税制改正の結論を先にまとめました。

- いつから?:2027年(令和9年)1月からスタート。
- 手取りはどうなる?:今回の変更だけなら手取り額は変わりません(税率の入れ替えが行われるため)。
- カラクリは?:新しい「防衛税」が1%増える代わりに、「復興税」が1%減ります。
- 隠れたデメリット:復興税を払う期間が10年間延長(2047年まで)されます。
- 重要な朗報:同時に「年収の壁(178万円)」対策が進むため、トータルでは大幅な減税(手取り増)になる人が多い見込みです。
2027年1月に何が起きる?「税率スワップ」の仕組み
政府は防衛費を増やす財源として所得税の増税を決めましたが、今の生活が苦しい中で単なる増税は受け入れられません。そこで採用されたのが、税率を「交換(スワップ)」する手法です。
「防衛税」の新設と「復興税」の減税
これまでは、所得税額に対して**2.1%**の「復興特別所得税」が上乗せされていました。2027年からは、この内訳が以下のように変わります。
| 税目の種類 | 現行(~2026年末) | 改正後(2027年~) |
|---|---|---|
| ① 防衛特別所得税 | なし | 1.0%(新設) |
| ② 復興特別所得税 | 2.1% | 1.1%(引き下げ) |
| 合計税率 | 2.1% | 2.1%(変化なし) |

このように、内訳が変わるだけで、私たちが支払う「付加税」の合計は2.1%のまま変わりません。そのため、2027年1月の給与明細を見ても、この改正による手取り額の変化は起きない仕組みになっています。
実は「ステルス増税」?期間延長の落とし穴
「税率が変わらないなら安心」と思うのは早計です。この改正の本当のポイントは、税率ではなく「期間」にあります。

復興税が10年も長引くことに
復興特別所得税の税率を半分(2.1%→1.1%)に下げると、当然ながら東日本大震災の復興に必要な財源が集まるペースが遅くなります。
そこで政府は、課税期間を延長することを決定しました。
- 本来の終了予定:2037年まで
- 改正後の終了予定:2047年まで(10年延長)
本来であれば2038年以降はなくなるはずだった税金(1.1%分)を、さらに10年間長く払い続けることになります。
月々の負担感は変わりませんが、生涯で支払う税金の総額は確実に増えることになります。これが「負担感なき増税」と呼ばれる理由です。
「年収の壁」178万円への引き上げとの関係
ここまでの話だと「結局、将来の負担が増えるだけか」と暗い気持ちになりますが、2025年末の政治決着には強力なセットプランがありました。
それが「年収の壁(基礎控除等)の引き上げ」です。

「防衛増税」vs「178万円の壁対策」
国民民主党などの主張により、所得税がかかり始める年収ラインを現在の103万円から178万円へ引き上げることが合意されました。これは、パート・アルバイトの方だけでなく、納税しているすべての現役世代に対する大型減税を意味します。
- 防衛増税の影響:月々の変化なし、将来の負担が少し増える。
- 基礎控除引き上げの影響:年間で数万円〜十数万円の手取り増(減税)。
結論:トータルでは手取りが増える可能性大
2027年の時点では、防衛増税によるマイナス影響よりも、基礎控除引き上げによるプラス効果(減税)の方が圧倒的に大きくなる見込みです。
政府や与党が、不人気な防衛増税の時期を2027年に決定できた背景には、この「手取りが増える」というアメ(減税)とセットにすることで、痛みを相殺(あるいはカモフラージュ)する狙いがあったと言えます。
法人税やたばこ税も変わる?今後のスケジュール
所得税以外にも、防衛財源確保のために以下の税金が変わります。

- 法人税(2026年4月〜):一定規模以上の企業に対し、法人税額に4〜4.5%上乗せされます。ただし、中小企業の多く(課税所得2400万円以下目安)は対象外となる配慮がなされています。
- たばこ税(2027年〜段階的実施):1本あたり3円相当の増税が、2027年から3年かけて段階的に行われます(加熱式たばこも対象)。
まとめ:2027年に向けて備えること
2027年の税制改正についてまとめます。
- 2027年1月から、給与明細上の税率は変わらないが、中身が「防衛税+復興税」に変わる。
- 復興税を払う期間が10年延びる(2047年まで)ため、生涯負担は少し増える。
- ただし、同時に基礎控除の大幅引き上げ(178万円の壁対策)が行われるため、多くの人にとって2027年の手取りは増える。
ニュースでは「防衛増税」という言葉が先行しがちですが、同時に進行している「基礎控除の引き上げ」とセットで考えることが重要です。家計全体で見れば、2027年は「手取りが増える年」になる可能性が高いですが、それが国の借金や将来世代への負担先送りになっていないか、私たち納税者は冷静に注視していく必要があります。
