「2021年に一般NISAで投資を始めたけれど、そろそろ5年経つ…この後どうなるの?」
「新NISAが始まったけれど、昔のNISA口座にある商品はどうすればいい?」

2024年から新NISAがスタートしましたが、それ以前の「旧NISA(一般NISA)」で購入した資産の扱いに迷っている方は多いのではないでしょうか。
特に2021年に購入した分は、2025年末(今年末)で5年間の非課税期間が終了します。
かつてのような「ロールオーバー(翌年の枠に移す)」制度が廃止された今、対応を間違えると税金面で大きな損をしてしまう可能性があります。
この記事では、2025年末に満期を迎える「2021年一般NISA枠」の出口戦略について、税金の仕組みや具体的なスケジュールを分かりやすく解説します。
最大の変更点:新NISAへの「ロールオーバー」はできません

まず、最も重要な結論からお伝えします。
2023年までの旧制度では、非課税期間(5年)が終わると、翌年の非課税枠へ資産を移す「ロールオーバー」が可能でした。しかし、制度が分離されたため、旧NISAから新NISAへのロールオーバーは不可となっています。
つまり、2025年末の時点で選択肢は以下の2つしかありません。
- 売却する(現金化して、新NISAの資金にする等)
- 課税口座(特定口座・一般口座)へ移管する(自動的に移る)
「何もしない」でいると、自動的に「2. 課税口座への移管」が選択されます。これが、保有資産の状況によっては大きなリスクとなるのです。
【重要】「含み益」と「含み損」で天国と地獄?税務の仕組み

2025年末に課税口座へ移る際、その資産の「取得価格(買った値段)」は、2025年12月31日時点の時価に書き換えられます(リセットされます)。
これが投資家にとって有利に働くか、不利に働くかは、現在の損益状況によって決まります。
ケースA:利益が出ている場合(含み益)→ 【メリットあり】
例えば、2021年に100万円で買った株が、2025年末に150万円になっていた場合。
- 課税口座に移ると、取得価格は「150万円」になります。
- この時点で100万円→150万円の利益50万円は非課税(税金ゼロ)で確定したことになります。
- 将来、さらに値上がりして160万円で売った場合、税金がかかるのは「150万円→160万円」の差額10万円分だけです。
結論: 利益が出ている場合は、そのまま課税口座に移しても、一度非課税メリットを享受できているため問題ありません(税務上の取得費がアップする=タックス・ステップアップ)。
ケースB:損をしている場合(含み損)→ 【要注意!二重の損】
問題はこちらです。例えば、2021年に100万円で買った株が、2025年末に60万円に下がっていた場合。
- 課税口座に移ると、取得価格は「60万円」に書き換えられます。
- 旧NISAでの**マイナス40万円の損失は「なかったこと(消滅)」**にされます(損益通算ができません)。
【ここが最悪のシナリオ】
その後、相場が回復して、買った値段と同じ100万円に戻った時に売却したとします。
投資家としての感覚は「元本に戻っただけ(プラマイゼロ)」ですが、税務署はこう判断します。
「あなたは60万円(移管時価格)で取得したものを、100万円で売りましたね? 40万円の利益が出ているので課税します。」
結果、実際は儲かっていないのに、約8万円(利益の約20%)の税金を取られてしまい、手元資金はマイナスになります。
結論: 「含み損」を抱えたまま満期を迎え、課税口座に移るのは避けるべきです。
あなたが取るべき3つの戦略
ご自身の状況に合わせて、以下の3つの戦略から選びましょう。

戦略A:年内に売却する(損切り・利益確定)
【こんな人におすすめ】
- 「含み損」が出ている銘柄を持っている人
- 資金を現金化して、教育費や住宅資金などに使いたい人
含み損がある場合は、年内に売却して損失を確定させるのが鉄則です。そうすれば、将来価格が戻った時に理不尽な課税をされるリスクを回避できます。
戦略B:スイッチング(売却して、新NISAで買い直し)
【こんな人におすすめ】
- 新NISAの「成長投資枠」が余っている人
- 今後も同じ銘柄を長期保有したい人
旧NISAで一旦売却(利益確定)し、その資金を使って新NISA口座で同じ商品を買い直す方法です。
実質的に、資産を「期限付きの旧NISA」から「無期限非課税の新NISA」へお引越しさせることになります。
※ただし、新NISAの年間投資枠(成長投資枠240万円)の範囲内でしか行えません。
戦略C:課税口座への移管(ホールド)
【こんな人におすすめ】
- すでに新NISAの枠(生涯上限1,800万円)を使い切っている人
- 大きな含み益があり、売買の手間や手数料をかけたくない人
- 高配当株などで、ずっと持ち続けたい人
「12月末に売ればいい」は間違い!カレンダーの罠

「じゃあ、12月30日の大納会までに売ればいいんでしょ?」と思った方は要注意です。
NISAの期間判定は、注文した日(約定日)ではなく、「受渡日(実際に株と現金が交換される日)」で行われます。
株や投資信託は、売ってもすぐには現金化されません。数日のラグがあります。
2025年末のデッドライン(目安)
| 資産クラス | 売却リミット(約定日) | 理由 |
|---|---|---|
| 日本株 | 12月25日(木)頃 | 受渡まで2営業日かかるため。12/26以降に売ると、受渡日が年明け(2026年)になり、NISA扱いになりません。 |
| 米国株 | 12月23日(火)頃 | 現地クリスマス休暇や時差があるため、さらに早まります。 |
| 投資信託 | 12月15日頃 | 海外資産を含むファンドは受渡に日数がかかります。また、ファンドごとに「年内最終受付日」が異なります。 |
※正確な日付は証券会社やファンドによって異なるため、12月に入ったら必ず確認してください。
もし12月29日などに慌てて売却しても、受渡日が2026年1月6日になってしまい、「課税口座に移管された後に売った」ことになります。これでは節税の意味がなくなってしまいます。
まとめ:秋にはポートフォリオの確認を

2025年は、旧NISA利用者にとって重要な節目の年です。
- 旧NISAから新NISAへの自動ロールオーバーはない。
- 含み益なら放置(移管)でもOKだが、含み損なら年内売却推奨。
- 新NISA枠が空いているなら、売却→新NISAで買い直し(スイッチング)が最強。
- 12月ギリギリは危険。12月中旬までに行動を。
まずはご自身の証券口座にログインし、「2021年」に購入した資産がどれくらいあり、現在プラスなのかマイナスなのかを確認することから始めましょう。