2025年、今年最大級のIPO(新規株式公開)として注目を集めるテクセンドフォトマスク(証券コード:429A)。その公募価格が、事前の仮条件(2,900円~3,000円)の上限である1株3,000円に正式決定しました。
国内では「大型案件で株価は上がりにくいのでは?」との懸念もありましたが、なぜ強気な価格設定になったのでしょうか?
結論から言うと、その背景には海外のプロ投資家からの圧倒的な需要がありました。
この記事では、テクセンドフォトマスクがどんな会社で、なぜ世界から注目されているのか、そして今後の株価のポイントは何かを分かりやすく解説します。
テクセンドフォトマスク IPOの基本情報
まずは、今回のIPOの基本情報を確認しましょう。

項目 | 詳細 |
---|---|
上場予定日 | 2025年10月16日 |
証券コード | 429A |
上場市場 | 東京証券取引所 プライム市場 |
公募価格 | 3,000円 |
仮条件 | 2,900円~3,000円 |
想定吸収金額 | 約1,566億円 |
主幹事証券 | SMBC日興証券 |
想定吸収金額が1,000億円を超える大型案件であり、市場の注目度が非常に高いことがわかります。
なぜ公募価格は上限の3,000円になったのか?
IPOの価格は、投資家が「いくらで何株欲しいか」を申告する「ブックビルディング」という仕組みで決まります。
今回、テクセンドの株は「3,000円でも買いたい」という投資家が殺到し、予定していた株数を大幅に上回る需要が集まりました。特に力強かったのが、海外の機関投資家からの需要です。
国内の懸念を吹き飛ばした「海外からの絶大な支持」
実は、国内の個人投資家の一部には、今回のIPOに懸念を示す声もありました。
- 規模が大きすぎる(需給が重い): 市場に出回る株数が多いため、初値が上がりにくい可能性がある。
- 大株主の利益確定(EXIT案件): 会社の成長資金のためというより、既存株主が株を売却する目的が強い。
しかし、海外の政府系ファンドや大手資産運用会社といった「スマートマネー」は、こうした短期的な懸念よりも、テクセンドフォトマスクが持つ本質的な価値を高く評価しました。
あまりの需要の強さに、当初の予定を変更して海外投資家への割り当てを増やすという異例の対応が取られたほどです。これは、世界のプロ投資家が「この会社の将来性なら3,000円はむしろ割安だ」と判断した強力な証拠と言えるでしょう。
そもそもテクセンドフォトマスクってどんな会社?
では、なぜテクセンドフォトマスクはそれほどまでに評価されているのでしょうか?
一言でいえば、半導体の製造に不可欠な「フォトマスク」という部品で世界No.1のシェアを誇る企業だからです。

出展:https://www.photomask.com/about
フォトマスクとは?半導体製造の「設計図の原版」
フォトマスクは、半導体の回路パターンをシリコンウェハに焼き付けるための「原版」です。カメラのネガフィルムのようなものをイメージすると分かりやすいかもしれません。
半導体の性能は、このフォトマスクの精密さで決まると言っても過言ではなく、非常に重要な役割を担っています。
テクセンドの「3つの強み」
テクセンドフォトマスクが世界で勝ち続けている理由は、主に3つの強みにあります。
- 最先端の技術力: AIや自動運転に不可欠な次世代半導体の製造技術「EUV」に対応できる数少ない企業の一つです。
- 世界唯一のグローバル製造網: 北米、欧州、アジアの8ヶ所に製造拠点を持ち、世界のどこにでも迅速に製品を供給できる体制を整えています。地政学リスクが高まる中で、この安定供給能力は絶大な強みです。
- 60年以上の歴史と信頼: もともとはTOPPANホールディングス(旧:凸版印刷)の一部門であり、世界の主要な半導体メーカーと長年にわたる強固な信頼関係を築いています。
今後の株価は?投資家が知っておくべきポイント
最後に、上場後の株価を考える上でのプラス材料と注意点をまとめます。
強気材料(ポジティブ)
- 市場の成長性: AI、5G、IoTの普及で半導体需要は今後も拡大が続く。
- 圧倒的な競争力: 世界No.1のシェアと高い技術力で、競合が簡単に真似できない。
- 海外プロ投資家のお墨付き: 長期的な視点を持つ投資家からの強い支持がある。
懸念材料(注意点)
- 短期的な需給の重さ: 大型案件のため、上場直後は売り圧力で株価が上がりにくい可能性がある。
- 短期的な業績: 2026年3月期の計画では、先行投資により営業利益が減少する見込み。
まとめ:短期的な値動きより「長期的な成長性」に注目
テクセンドフォトマスクのIPOは、「短期的な需給懸念」と「長期的な企業の成長性」がせめぎ合う興味深い案件です。
公募価格が仮条件の上限である3,000円に決まったことは、世界の投資家が後者を高く評価した結果と言えます。
上場直後は株価が変動する可能性もありますが、この会社が半導体産業の未来を支える世界クラスのリーダー企業であることは間違いありません。長期的な視点で、その成長性に投資する価値があるかを見極めていくことが重要になるでしょう。