スライサーから「統合製造プラットフォーム」への進化
Bambu Labの人気スライサーソフト「Bambu Studio」がバージョン2.5.0に大型アップデートされました。今回の更新は、単なる機能追加にとどまらず、今後登場する次世代機(H2シリーズやP2S)を見据えた「ハードウェアとソフトウェアの完全統合」を意味する重要なマイルストーンです。

特に注目すべきは、環境制御(湿度管理)と物理挙動制御(振動抑制)へのアプローチです。本記事では、プロの視点から新機能のメリットを解説すると同時に、現在報告されている重大な不具合についても包み隠さずお伝えします。
1. 湿度との戦いに終止符?「能動的乾燥制御」の実装
FDM方式の3Dプリンターにおいて、最大の敵の一つが「湿気(吸湿)」です。Bambu Studio 2.5.0では、新型ハードウェア(AMS 2 Pro / AMS HT)と連携し、スライサー側からフィラメントの乾燥状態を管理できるようになりました。
プリント中乾燥(Drying while Printing)とは?
通常、プリント中にフィラメントを加熱乾燥させることは、フィラメントが柔らかくなりすぎて詰まる「ヒートクリープ」のリスクがあるためタブーとされてきました。
しかし、今回のアップデートでは以下の技術によりこれを実現しています。

- サーマル・スロットリング制御: プリンターのモーター負荷やエクストルーダー温度をリアルタイムで監視。
- 自動温度調整: プリント動作中は、乾燥温度を安全なレベルまで自動的に下げ、ハードウェアの損傷を防ぎながら低湿度を維持します。
これにより、吸湿しやすいナイロン(PA)やPETGなどを使用した長時間の造形でも、品質劣化(加水分解による発泡や強度低下)を防ぐことが可能になります。
2. 表面品質の革命:VFA対策と光沢の均一化

Bambu Labのプリンターのような高速機で課題となっていた「VFA(縦縞模様)」や「光沢ムラ」に対し、ソフトウェア側からの解決策が提示されました。
Consistent Surface(表面均一化アルゴリズム)
従来の「オートスローダウン(冷却のための減速)」は外壁の速度を落とすため、その部分だけ光沢が変わってしまう問題がありました。
新機能では、減速が必要な場合、まずインフィル(内部)の速度を落とし、外壁の速度は可能な限り維持します。これにより、シルクPLAなどでも均一で美しい仕上がりが得られます。
Short Travel Acceleration(短距離移動の加速度抑制)
外壁の短い移動区間において、加速度を劇的に(デフォルト250 mm/s²まで)制限する機能です。
- メリット: ガタつき(ジャーク)を抑え、コーナーや細かいディテールの品質が向上。
- 効果: ゴーストやVFAの発生源となる振動エネルギーを物理的にカットします。
3. マルチマテリアル造形の弱点を克服
PLAとPETGを組み合わせたサポート剥離テクニックなどは便利ですが、「プライムタワーが崩壊しやすい」という物理的な課題がありました。これに対し、開発者モード(Developer Mode)を通じて高度な対策が可能になりました。

| 機能名 | 効果・メリット |
|---|---|
| インターフェース層の温度ブースト | 接合面の温度を上げ、異種材料間の物理的な食いつき(アンカー効果)を強化します。 |
| プレ押出制御 (Pre-extrusion) | ノズル切り替え直前に少量を捨て打ちし、内圧を高めることで、タワー描画開始時の欠けや定着不良を防ぎます。 |
| サポートインターフェースアイロン | サポートの上面をアイロン掛けして平滑化。底面品質が劇的に向上し、まるでビルドプレートに接していたような仕上がりに。 |
4. その他の便利な新機能

- ループ細分割 (Loop Subdivision): カクカクした低解像度(ローポリ)のSTLデータを、CADを使わずにスライサー内で滑らかな曲面に変換します。
- 2D Lattice インフィル: 航空機モデルやドローン部品向けに、特定の方向に強度を持たせつつ軽量化できる新しいインフィルパターンです。
- 3MFカラー情報のネイティブ対応: 外部ソフトで色付けしたモデルをスムーズに読み込めます。
【重要】導入前に確認すべき不具合情報 (v2.5.0.66)
機能面では魅力的ですが、業務利用されている方はアップデートを待つべきかもしれません。現在、以下の重大なバグが報告されています。
1. ネットワークディスカバリーの不具合
LAN内のプリンターがBambu Studio上から認識されなくなる現象が多発しています(スマホアプリからは見えるがPCからは見えない等)。
2. クラウドプロファイル同期の失敗
ログインしてもカスタム設定(フィラメントプロファイルやプロセス設定)が読み込まれず、デフォルト設定に戻ってしまうケースがあります。これにより、AMSのマッピングができなくなる報告があります。
3. アプリケーションのクラッシュ
メニュー操作中やスライス実行時に強制終了する頻度が高くなっています。
推奨される対策
安定性を最優先する場合は、修正パッチが配布されるまでバージョン2.4.x系を使い続けることを強く推奨します。新機能を試す場合も、以前のバージョンに戻せるようインストーラーを確保しておきましょう。
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まとめ:Bambu Studio 2.5.0はアップデートすべき?
Bambu Studio 2.5.0は、次世代の「H2シリーズ」や「P2S」の性能をフルに引き出すための意欲的なアップデートです。特に乾燥機能の統合と表面品質の制御は、FDM方式の限界を押し広げるものです。
しかし、現時点(ホットフィックス v2.5.0.66)ではシステム基盤に関わる不具合が残っています。
- ホビーユーザー・実験好きの方: 新機能を試す価値は大いにあります。開発者モードでパラメーターを調整する楽しさが増えました。
- ビジネスユーザー・安定重視の方: 次のマイナーアップデートで不具合が解消されるまで、待機が正解です。
今後のBambu Labのエコシステム進化から目が離せません。
この記事は最新の技術レポートおよびリリースノートに基づき作成されています。



