2025年11月、世界最大級のAM展示会「Formnext 2025」にて、3Dプリンター業界を揺るがす新機種が発表されました。その名はBambu Lab H2C。
これまで「高速・高画質」で業界をリードしてきたBambu Labが、FDM方式の長年の課題であった「マルチカラー印刷時のフィラメント廃棄(通称:うんち)」問題についに終止符を打ちました。

この記事では、H2Cの革新的な新技術「Vortek(ヴォルテック)システム」の仕組み、スペック比較、そして日本での価格や発売日について、最新の技術調査報告に基づき徹底解説します。
Bambu Lab H2Cとは?最大の特徴は「Vortek」
Bambu Lab H2Cは、Bambu Labの新しいハイエンドライン「H2シリーズ」の最上位モデル(Comboモデル)です。その最大の特徴は、独自の「Vortek(ヴォルテック)ホットエンド交換システム」にあります。

Vortekシステムによる色変えの仕組み
従来のAMS(Automatic Material System)は1つのノズルに対してフィラメントを入れ替える方式でしたが、H2Cはホットエンド(ノズルの先端部分)そのものを物理的に交換します。
- 右ヘッド(Vortek搭載): チャンバー内のドックに格納された予備ホットエンドと自動でドッキング・解除を行い、色を切り替えます。
- 左ヘッド(固定式): メインの造形材や、交換頻度の低いエンジニアリング素材を担当します。
これにより、最大7色(AMS拡張時はそれ以上)を「パージなし(廃棄なし)」で切り替えることが可能になりました。
なぜ「パージなし」が革命なのか?廃棄削減の仕組み
これまでのマルチカラー印刷(X1Cなど)では、色を変えるたびに前の色のフィラメントを押し出して捨てる「パージ(排出)」が必要でした。H2Cはこの常識を覆します。

H2C導入の3大メリット
- 廃棄率90%以上削減(環境・コスト対策)
- 色変えごとの捨てフィラメント(Poop)がほぼゼロになります。
- 色混じりを防ぐための「パージタワー」も不要になります。
- ランニングコストの劇的低下
- 高価なカーボン繊維入り素材やエンジニアリングプラスチックを無駄に捨てずに済みます。
- 印刷時間の短縮
- パージタワーを印刷する時間や、パージ動作自体の時間がなくなるため、トータルの造形時間が短縮されます(特に色替え回数が多いモデルで顕著)。
ポイント: H2Cは、「捨てる素材の方が完成品より重い」というFDM方式マルチカラー印刷の最大の矛盾を解決したマシンです。
技術仕様:電磁誘導加熱とスマートノズル
Vortekシステムを支えるために、H2Cには驚くべき先端技術が搭載されています。

電磁誘導加熱(Induction Heating)
ノズルの加熱方式に、従来のセラミックヒーターではなくIH(電磁誘導)を採用しました。

- 非接触加熱: 接点がないため、何万回の交換を行っても接触不良が起きません。
- 超高速昇温: 作業温度までわずか8秒で到達します。
- 超軽量: 交換ユニットは約10gと極めて軽く、高速印刷の妨げになりません。

スマートノズル(The Hotend Remembers)
各ホットエンドにはチップが内蔵されており、無線で本体と通信します。
- 情報の記憶: 使用中のフィラメント種類、ノズルの摩耗度、個体ごとの温度補正値を記憶しています。
- ミス防止: 例えば「黒色ABS用ノズル」で誤って「白色PLA」を印刷しようとするとシステムが警告を出し、混色や事故を防ぎます。
H2シリーズ比較表(H2S / H2D / H2C)
H2シリーズにはターゲットの異なる3つのモデルが存在します。
| 特徴 | H2S (シングル) | H2D (デュアル) | H2C (コンボ) |
|---|---|---|---|
| ノズル構成 | シングルノズル | 独立デュアル (IDEX的運用) | Vortekシステム (ホットエンド交換) |
| 最大の特徴 | 大型・高コスパ | 異種素材・水溶性サポート | 廃棄物ゼロ・多色量産 |
| ビルドサイズ | 340×320×340mm | 350×320×325mm | 330×320×325mm |
| チャンバーヒーター | オプション | 標準装備 (最大65℃) | 標準装備 (最大65℃) |
| ターゲット層 | エンジニアリング入門 | 複合素材プロトタイプ | ハイエンド・プロフェッショナル |
日本での発売日と予想価格
最新の市場動向に基づく予測です。
日本での発売時期
- グローバル: 2025年末より順次出荷開始。
- 日本国内: 技適(無線通信)やPSE認証の手続きが必要なため、2026年1月〜2月頃の正式リリースが濃厚です。
価格(税込)
¥399,900(税込)

H2Cのメリット・デメリット
導入を検討する際に知っておくべきポイントを整理しました。
メリット(Pros)
- フィラメント廃棄コストの激減: ヘビーユーザーなら1年で差額を回収できる可能性があります。
- 大型造形の安定性: アクティブヒーターにより、ABSなどの難易度が高い素材でも大型出力が可能。
- AIによる監視: 59個ものセンサーとAIカメラで、失敗を未然に防ぎます。
デメリット・注意点(Cons)
- TPU(柔軟素材)の制約: Vortekシステム(右ヘッド)はAMSを経由するため、柔らかいTPUの使用は推奨されません。TPUを使う場合は、左側の固定ノズルで外部スプールから直接供給する必要があります。
- 設置スペースと騒音: 本体サイズが大きく(約50cm四方、32.5kg)、動作音やファンノイズも大きいため、一般家庭のリビングへの設置は困難です。
- 独自規格のノズル: ノズルは高機能な専用品のため、安価なサードパーティ製は使えません。
【FAQ】Bambu Lab H2Cに関するよくある質問
Q: 従来のX1Cユーザーが買い替える価値はありますか?
A: 多色印刷の頻度が高い場合、または大型のABSパーツを出力したい場合は、買い替える価値が十分にあります。逆に、単色PLAメインであればX1Cで十分です。
Q: Prusa XL(5ヘッド)との違いは何ですか?
A: Prusa XLは「全てのヘッドにフィラメントが装填されている」ため交換時間がゼロですが、高価です。H2Cは「ノズル先だけ交換」するため、ロード時間は発生しますが、廃棄はなく、価格とサイズのバランスに優れています。
Q: メンテナンスは難しいですか?
A: 可動部が増えた分、X1Cよりは複雑ですが、各モジュールは交換可能な設計になっています。
結論:プロフェッショナルにとって「買い」か?

おすすめな人
- フィギュア作家・モデラー: 廃棄物を気にせず、複雑なカラーリング作品を量産したい方。
- プリントファーム運営者: 材料コストを削減し、パージタワー除去の手間を省きたい方。
- エンジニア: ABSやPCなど、反りやすい素材で実用的な大型パーツを作りたい方。
総評
Bambu Lab H2Cは、単なる「新型」ではなく、3Dプリンターの歴史における「マルチカラー印刷の正解」を示した機種です。
初期投資は高額ですが、フィラメント廃棄コストの削減と作業効率の劇的な向上により、プロフェッショナルやヘビーユーザーにとっては、間違いなく「元が取れる」最強の投資となるでしょう。