【徹底解説】高市トレードはなぜ崩壊した?公明党の連立離脱が引き起こした株価急落の深層

【徹底解説】高市トレードはなぜ崩壊した?公明党の連立離脱が引き起こした株価急落の深層

2025年10月11日

2025年10月10日、日経平均株価は一時500円以上も急落し、市場に大きな衝撃が走りました。

この数週間、市場を牽引してきたのは、高市新総裁の経済政策への期待から生まれた「高市トレード」と呼ばれる株高の流れでした。

しかし、その流れは公明党の連立政権からの離脱というニュース一つで、わずか一日で崩壊してしまったのです。

「なぜ、あれほど期待されていたのに急に株価が下がったの?」

「政治のニュースが、どうしてここまで株価に影響するの?」

この記事では、そんな疑問に答えるため、「高市トレード」の発生から崩壊までの一連の流れを、3つのポイントで分かりやすく解説します。

  1. そもそも「高市トレード」とは何だったのか?
  2. なぜ公明党は連立を離脱したのか?
  3. 今後の市場で注意すべきことは何か?

この記事を読めば、今回の株価急落の裏側にある「政治と経済の深いつながり」が理解できるはずです。

「高市トレード」とは?政策期待が生んだ熱狂

まず、今回の主役である「高市トレード」について見ていきましょう。これは、高市氏が掲げる経済政策、通称「サナエノミクス」への期待感から、特定の分野の株が大きく買われた動きのことです。

市場が特に注目したのは、以下の3つの政策でした。

  • 積極的な財政出動
    • 防衛費の大幅な増額や、インフラ整備(国土強靱化)など、国が大規模にお金を使うことへの期待。
  • 大胆な金融緩和の継続
    • 日銀の利上げに慎重な姿勢を示し、低金利を維持することで円安を後押しし、輸出企業の業績アップに繋がると見られていました。
  • インフレ容認の姿勢
    • 物価上昇を目指すことで、企業の収益増や資産価値の向上に繋がるという前向きな期待が広がりました。

どんな株が買われたのか?

この「サナエノミクス」の恩恵を受けると期待されたのが、以下の分野の企業です。

政策テーマ関連分野具体的な銘柄の例
経済安全保障・防衛防衛産業、半導体三菱重工業 (7011), IHI (7013)
エネルギー政策原子力発電、次世代エネルギー日立製作所 (6501), 関西電力 (9503)
科学技術・インフラAI、量子コンピュータ、建設富士通 (6702), 小松製作所 (6301)

このように、「高市トレード」は、実際の業績よりも「政策への期待」という物語によって株価が押し上げられた、投機的な側面が強い相場だったのです。だからこそ、その物語の前提が崩れた時、もろくも崩れ去る危険性をはらんでいました。

連立崩壊の引き金:埋められない「理念」の対立

では、なぜその前提が崩れてしまったのでしょうか。原因は、自民党と公明党の間に横たわる、根本的な理念の対立です。

長年、両党は選挙協力を軸とした「便宜上」のパートナーでした。しかし、その根底にある思想は、まさに「水と油」だったのです。

特に、高市氏が掲げる保守的な政策は、公明党が掲げる「平和の党」としての理念とは相容れないものでした。

政策分野高市氏(自民党保守派)のスタンス公明党のスタンス
防衛予算GDP比2%以上への大幅増額を志向「専守防衛」の範囲内に抑制
憲法9条改正に前向き平和主義を堅持、改正に否定的
対中外交強硬な姿勢を重視対話と協調を重視

高市氏の総裁就任は、この隠れていた対立を表面化させました。公明党にとって、高市政権と連立を組むことは、自らの党のアイデンティティを捨てることに等しかったのです。

2025年10月10日の連立離脱は、単なる政策の不一致ではなく、これ以上は譲れない一線を守るための、必然的な決断だったと言えるでしょう。

市場のパニックと今後の展望

一瞬で消えた楽観ムード

公明党の連立離脱のニュースは、市場の楽観ムードを一瞬で吹き飛ばしました。

  • 株価:日経平均は急落。取引終了後には先物が一時1,200円近く下落し、市場の絶望感を示しました。
  • 為替:リスクを避ける動きから円が急速に買われ、1ドル=153円台まで進んだ円安が一気に152円台前半まで巻き戻されました。

これまで市場は「高市氏の政策は成功するか?」という政策リスクを織り込んでいました。しかし、連立離脱によって「そもそも安定した政権が維持できるのか?」という、より深刻な政治不安定リスクへと質が変わってしまったのです。

投資家が注意すべきこと

市場の最大の関心は、今後の政権の枠組みに移っています。

  • 少数与党政権になるのか?
  • 国民民主党など、新たなパートナーと連立を組むのか?

いずれにせよ、高市氏が当初掲げた政策がそのまま実現する可能性は大きく低下しました。

この不確実な状況下で、投資家の資金は「高市トレード」で買われた物語主導の銘柄から、堅実な業績と財務基盤を持つ優良企業(クオリティ株)へとシフトする可能性があります。

まとめ:今回の株価急落が教える「不変の教訓」

「高市トレード」の興隆と崩壊は、私たち投資家に重要な教訓を教えてくれます。

それは、どれだけ魅力的な経済政策が掲げられても、その土台となる「政治の安定」がなければ、市場の信頼は得られないということです。

市場は、経済の数字と同じくらい、あるいはそれ以上に、政治の安定性を重視します。今回の出来事は、その不変の原則を改めて浮き彫りにしました。

今後の投資判断においては、個別の企業業績だけでなく、日本の政治がどのような枠組みで安定を取り戻していくのかを、注意深く見守っていく必要があるでしょう。

-バリュー, 雑記
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