【2025年】なぜ日本のIPOは激減したのか?スタートアップ市場に起きる地殻変動を徹底解説

【2025年】なぜ日本のIPOは激減したのか?スタートアップ市場に起きる地殻変動を徹底解説

2025年10月2日

2025年、日本の新規株式公開(IPO)市場が急ブレーキを踏みました。

特に4月から9月にかけて、IPOを目指す企業の数が大幅に減少し、多くのスタートアップや投資家が固唾をのんで状況を見守っています。

これは単なる一時的な落ち込みなのでしょうか?それとも、日本のスタートアップエコシステム全体に関わる大きな構造変化の始まりなのでしょうか?

この記事では、2025年のIPO市場で何が起きているのか、その根本的な原因から、スタートアップや投資家への影響、そして今後の見通しまで、誰にでも分かりやすく解説します。

データで見る「IPOの冬」:2025年市場のリアル

まず、具体的な数字を見てみましょう。2025年上半期のIPO市場は、明らかに「冬の時代」を迎えています。

  • IPO件数が大幅減:上半期のIPO企業数は28社(TOKYO PRO Marketを除く)と、前年の38社から10社も減少し、過去10年で最も低い水準に落ち込みました。
  • スタートアップのIPOが半減:未来の日本経済を牽引すると期待されるスタートアップのIPOは、特に大きな影響を受けています。主要な上場先である東証グロース市場への上場は、前年の34社から18社へとほぼ半減しました。

一方で、興味深い現象も起きています。それは**「量より質」への転換**です。

  • 企業評価額は上昇:IPOする企業の数は減りましたが、1社あたりの時価総額(中央値)は113億円と、前年比で27%も増加しています。
  • 「赤字上場」の減少:将来性だけで評価されるのではなく、きちんと利益を出している企業が選ばれる傾向が強まっています。

つまり、市場は単に縮小しただけでなく、より厳選された、成熟した企業だけが上場できるという、よりシビアな環境へと変化しているのです。

最大の原因は「東証のルール変更」という名の高い壁

では、なぜこれほどまでに市場は冷え込んでしまったのでしょうか。最大の要因は、東京証券取引所(東証)が打ち出したグロース市場のルール厳格化です。

新旧ルールの比較

項目これまでのルールこれからのルール
評価タイミング上場してから10年後上場してから5年後
求められる時価総額40億円以上100億円以上

この変更は、スタートアップにとって非常に大きな意味を持ちます。

これまでよりも「2倍の速さで、2.5倍の規模に成長しなさい」という、市場からの明確で厳しいメッセージなのです。

この高いハードルが設定されたことで、多くの企業が「今のままでは基準をクリアできない」と判断し、IPO計画そのものを見直したり、延期したりする事態が相次いでいるのです。

IPO市場に追い打ちをかける3つの向かい風

東証のルール変更という直接的な原因に加え、マクロ経済の不確実性も市場の冷え込みを加速させています。

  1. 金融政策の不透明感:日本銀行は利上げに慎重な姿勢を崩していません。「いつ、どれくらい金利が上がるか分からない」という状況は、将来の企業価値を算定するベンチャーキャピタル(VC)の投資判断を難しくさせています。
  2. 世界経済のリスク:米国の通商政策など、海外発の経済リスクが高まると、投資家はリスクの高い新規公開株への投資をためらう傾向が強まります。
  3. 株式市場の停滞:市場全体が盛り上がっていない状況では、新しい株を買おうという意欲が湧きにくく、IPOの魅力が相対的に低下してしまいます。

これら「制度変更」と「経済不安」というダブルパンチが、2025年のIPO市場をこれほど厳しい状況に追い込んだのです。

スタートアップエコシステムの地殻変動:M&Aが主役へ

IPOという道が険しくなった結果、日本のスタートアップエコシステム全体で大きな変化が起きています。

出口戦略の主役交代:IPOからM&Aへ

これまで、スタートアップの成功の証とされてきたIPO。しかし、その代替案であったはずのM&A(企業の合併・買収)が、今や最も現実的で魅力的な「出口戦略」として注目を集めています。

  • M&A件数は高水準を維持:IPOが減少する一方で、2025年上半期にはスタートアップ関連のM&Aが92件観測されるなど、活発な動きが続いています。
  • 「失敗したからM&A」ではない:M&Aはもはや次善の策ではなく、事業の初期段階から狙うべき主要な戦略として認識され始めています。

資金調達の二極化:「選ばれる企業」と「そうでない企業」

スタートアップの資金調達総額は横ばいを維持していますが、その内実には深刻な「二極化」が進行しています。

  • 投資家はより慎重に:VCなどの投資家は、将来性が確実に見込める、ごく一部の優良企業に資金を集中させています。
  • アーリーステージには逆風:一方で、事業の初期段階にある多くのスタートアップにとっては、資金調達のハードルが格段に上がっています。

今後の展望と私たちが取るべき戦略

この「より少なく、より質の高いIPO」と「活発なM&A」という流れは、今後も日本のスタートアップ市場の新たな常識(ニューノーマル)として定着していくでしょう。

この変化の時代を乗り切るために、各プレイヤーは何をすべきでしょうか。

  • スタートアップ・起業家へ
    • 出口戦略を再定義する:IPOだけでなく、M&Aも有力な選択肢として早期から戦略を練る。
    • 足元の収益性を重視する:「成長のためなら赤字OK」の時代は終わり。確実な収益モデルを構築する。
    • いつでも上場できる準備を:特定の時期にこだわらず、常に上場できるだけの強固な経営体制を目指す。
  • 投資家(VC・CVC)へ
    • 長期的な視点を持つ:投資回収までの期間が長くなることを見据え、M&Aによる出口も現実的に評価する。
    • 事業シナジーを提供する:特に事業会社系のCVCは、資金提供だけでなく、事業連携やM&Aへの道筋を示すことで価値を高める。

まとめ

2025年のIPO市場の急減速は、単なる不況ではなく、日本のスタートアップエコシステムが次のステージへ向かうための構造転換と捉えることができます。

これからの時代は、短期的な評価額を追い求めるのではなく、持続可能な事業をいかに構築できるかが問われます。この大きな変化に適応できた企業こそが、未来の日本経済を創る真の主役となるでしょう。

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