トヨタが富士山の麓でつくる「未来の実験室」とは？
「Woven City（ウーブン・シティ）」という言葉を聞いたことがありますか？
これは、自動車メーカーのトヨタが静岡県裾野市、まさに富士山の麓で建設を進めている、まったく新しいコンセプトの街のことです。
単なるハイテクなスマートシティではありません。実際に人々が暮らしながら、未来の技術やサービスを試し、開発していく「生きている実験室（リビング・ラボラトリー）」なんです。
この記事では、世界中が注目するこのWoven Cityについて、以下のポイントを分かりやすく解説していきます。
- Woven Cityって、一体どんな街なの？
- 私たちの生活にどんな最新技術が使われるの？
- なぜトヨタは「街づくり」に挑戦するの？
- 未来の生活への期待と課題は？
この記事を読めば、トヨタが描く未来の暮らしの設計図が、きっとあなたにも見えてくるはずです。
Woven Cityの3つの大きな特徴
Woven Cityを理解するためのキーワードは3つあります。それぞれ見ていきましょう。
① 3種類の道が「織りなす」街並み
この街の最大の特徴は、地上に3種類の道路が網の目のように「織りなされている（Woven）」ことです。
- 自動運転車専用の道
- トヨタの自動運転EV「e-Palette」などがスムーズに走行します。
- 人とパーソナルモビリティの道
- 電動キックボードのような乗り物と歩行者が共存する、公園のような遊歩道です。
- 歩行者専用の緑道
- 自然の中を散策したり、リラックスしたりするための道です。
さらに、地下には物流専用のトンネルが張り巡らされ、荷物の配送やゴミの回収はすべて自動運転ロボットが行います。これにより、地上から配送トラックなどがなくなり、静かで安全な景観が保たれるのです。
② 人が中心の「スマートホーム」と最新技術
Woven Cityでの暮らしは、テクノロジーによって支えられています。
- AIとロボットによる生活支援
- 掃除や料理などの家事はロボットがお手伝い。
- 室内のセンサーが心拍数や睡眠などを常にチェックし、AIが健康管理をサポートしてくれます。
- ストレスフリーなサービス
- ネットで注文した商品は、地下の物流網を通って各住戸のスマートポストに自動で届けられます。
- 街の移動は、アプリで呼び出す自動運転車で。渋滞の心配もありません。
テクノロジーのための街ではなく、あくまでも「人々の暮らしを豊かにする」という人間中心の考え方が貫かれています。
③ 地球にやさしい「水素エネルギー」社会
Woven Cityは、環境問題にも真正面から取り組みます。エネルギーの中心となるのは、次世代のクリーンエネルギーとして注目される「水素」です。
- つくる：再生可能エネルギーを使ってCO2を排出しない「グリーン水素」を製造。
- はこぶ：専用パイプラインで街の地下へ供給。
- つかう：燃料電池で発電し、街の電力や乗り物のエネルギーとして利用。
太陽光発電なども組み合わせ、街全体でエネルギーを賢く管理することで、持続可能な社会のモデルケースを目指しています。
なぜトヨタはWoven Cityをつくるのか？
トヨタは、単なる「自動車メーカー」から、人々のあらゆる移動を支える「モビリティカンパニー」への変革を目指しています。
Woven Cityは、その変革を実現するための壮大な実証実験の場なのです。
創業の原点である「誰かを楽にしたい」という想いを現代で実現し、「幸せの量産」を目指す。それが、このプロジェクトに込められたトヨタの哲学です。
また、新しい技術やサービスは、実際に人々が生活する環境で試して改善（カイゼン）を重ねなければ、本当に役立つものにはなりません。Woven Cityは、トヨタだけでなく、様々なパートナー企業や研究者が参加するオープンなプラットフォームとして、未来の「当たり前」を発明していく場所なのです。
未来への期待と考えるべき課題
Woven Cityが実現すれば、私たちの暮らしはより安全で、快適で、健康的なものになる可能性を秘めています。しかし、その一方で考えるべき課題もあります。
- プライバシーの問題
- 生活のあらゆるデータが集められるため、その情報を誰がどのように使うのか、透明性の高いルール作りが不可欠です。
- 実現可能性とコスト
- これほど高度な街を維持していくためのコストや、他の都市でも応用できるモデルなのか、という課題があります。
- コミュニティのあり方
- 計画された環境の中で、どのようにして人間味あふれる、多様性のあるコミュニティが育まれていくのかも重要なテーマです。
これらの課題にどう向き合っていくのかも、この実験都市の重要な役割の一つと言えるでしょう。
まとめ：Woven Cityは、未来の暮らしを映す鏡
Woven Cityは、単なる未来都市のモデルルームではありません。
自動運転、AI、ロボティクス、クリーンエネルギーといった最先端技術を統合し、「人々が主役の、より良い暮らしとは何か？」という問いに答えを出すための壮大な社会実験です。
2025年以降、実際に人々が住み始めることで、この街は本格的に動き出します。富士山の麓で始まるこの挑戦が、私たちの社会にどのような変化をもたらすのか。これからも目が離せません。
