2025年、金融業界のセキュリティにおける大きな転換点となるニュースが発表されました。楽天証券が2025年10月26日より、次世代認証技術である「パスキー(Passkey)」を全面導入します。
「これまでのパスワードと何が違うの?」
「難しそう…」
と感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、楽天証券でのパスキー導入によって私たちの利用体験がどう変わるのか、そしてそもそも「パスキー」とはどのような仕組みなのかを、専門的な知識がなくても分かるようにやさしく解説します。

楽天証券が2025年10月から「パスキー」を全面導入
楽天証券は、国内の主要証券会社として初めて、本格的なパスワードレス認証への移行に踏み切りました。

導入の概要
- 導入開始日: 2025年10月26日(日)
- 対象サービス: PCウェブサイト、トレーディングツール「MARKETSPEED」シリーズ、スマートフォンアプリ「iSPEED」シリーズなど、ほぼ全てのチャネル。
- 対象外: 「楽天MT4」のみ対象外となります。
何が変わるのか?(ユーザー体験の変化)
これまでのログイン方法と、パスキー導入後の変化を比較してみましょう。
| 従来のログイン | パスキーでのログイン | |
|---|---|---|
| 必要な情報 | ログインID + パスワード | スマートフォンなどのデバイス |
| 追加認証 | メールでの絵文字認証など | 不要 |
| 操作 | キーボード入力 + メール確認 | スマホのロック解除(顔・指紋)だけ |
従来必要だった複雑なパスワード入力や、メールを使った追加認証の手間が一切なくなり、スマホを見るだけ(顔認証)、触れるだけ(指紋認証)で瞬時にログインが完了するようになります。
いまさら聞けない「パスキー」の基本的な仕組み
「パスキー」とは、FIDOアライアンスとW3Cが標準化した「FIDO2」という規格に基づく、パスワードを使わない新しい認証方式です。

パスワード認証との決定的な違い
従来のパスワード認証は「合言葉」です。あなたと楽天証券のサーバーが同じ「合言葉(パスワード)」を知っており、それを照らし合わせて本人確認を行います。しかし、この合言葉は漏洩したり、盗み見られたりするリスクが常にありました。
一方、パスキーは「公開鍵暗号方式」を使います。
- 鍵のペアを作成: あなたのスマホの中に「秘密鍵」、楽天証券のサーバーに「公開鍵」というペアを作成します。
- 秘密鍵は外に出ない: 重要な「秘密鍵」はスマホの安全な領域に保管され、絶対に外(インターネット上)には出ません。
- 署名でログイン: ログイン時、サーバーから送られてきたデータに対して、スマホ内の「秘密鍵」で電子署名(サイン)をします。サーバーは対になる「公開鍵」でその署名を検証し、ログインを許可します。
ユーザーは、この複雑な計算処理を行うために、スマホの画面ロックを解除(生体認証など)するだけで良いのです。
なぜ安全?パスキーの圧倒的なメリット
パスキーが「次世代認証」と呼ばれる最大の理由は、その安全性にあります。特に、近年急増しているフィッシング詐欺に対して圧倒的な強さを発揮します。

フィッシング詐欺にかからない理由
従来のパスワードや二段階認証(SMSやメールで届くコード)は、偽サイト(フィッシングサイト)に入力してしまうと、攻撃者に情報を盗まれてしまいました。
しかし、パスキーには「オリジン・バインディング」という強力な機能があります。
これは、「本物の楽天証券のサイト(正しいドメイン)でしか、パスキーが反応しない」という仕組みです。もしあなたが精巧な偽サイトに誘導されてしまっても、スマホ(ブラウザ)が「サイトが違う」と判断し、認証自体が動作しません。
人間が騙されても、機械が騙されない仕組みになっているのです。
【重要】楽天証券独自の仕様と新たなリスク
非常に便利なパスキーですが、楽天証券での利用には独自の注意点があります。また、パスワードとは異なる新たなリスク管理が必要です。

注意点1:楽天証券は「1アカウントにつきパスキー1つ」
GoogleやAppleのアカウントでは複数の端末にパスキーを登録できますが、楽天証券では1つのアカウントにつき、作成できるパスキーは1つのみという制限があります。
これは、登録したその1台の端末が「唯一の鍵」になることを意味します。
注意点2:デバイスの紛失・故障リスク
「唯一の鍵」であるスマホを紛失したり、故障して操作できなくなったりすると、ログインが非常に困難になります。その場合、楽天証券所定の本人確認手続き(自動音声ダイヤルなど)が必要になる可能性があります。
注意点3:機種変更時の手続き
新しいスマホに買い替える場合、特にiPhoneからAndroidへ(またはその逆)OSをまたぐ変更をする際は注意が必要です。
- 古い端末でログインし、古いパスキーを削除する
- 新しい端末で、新しいパスキーを作成する
この手順を確実に行う必要があります。
注意点4:スマホのロックを強固にする
パスキー導入後は、「スマホの画面ロック」があなたの資産を守る最後の砦になります。
推測されやすいPINコード(「0000」や誕生日の組み合わせなど)は避け、強固なロック設定を行うことが、これまで以上に重要になります。
まとめ:パスキー時代への備え

楽天証券のパスキー導入は、私たちの資産を守るセキュリティが一段階レベルアップすることを意味します。
- メリット: パスワード管理から解放され、ログインが瞬時に。フィッシング詐欺にも強い。
- 準備すること: スマホの画面ロック設定を見直し、より強固なものにしておく。
2025年10月の導入に向け、この新しい「鍵」の特性を正しく理解して、安全で快適な投資環境を整えましょう。