2026年9月、宿泊施設の予約や顧客情報管理システムを手掛ける SQUEEZE と、総合不動産大手の ヒューリック が、ホテル・観光領域における資本業務提携を発表し、株式市場から大きな注目を集めています。


この発表を受け、東京証券取引所グロース市場において SQUEEZE の株価は、前週末比で一時 9.6 %を超える上昇を見せ、 6340 円まで急伸しました。
市場が最も好感した要因は、単なる業務レベルの協業にとどまらず、強固な資本関係の構築にあります。
ヒューリック は、既存株主から SQUEEZE 株式の約 5 %を追加取得する予定であり、2026年4月の上場時に取得した約 2 %と合わせることで、安定した大株主となります。
上場直後のグロース企業によく見られる将来的な株式売却懸念が解消され、強大な資金力を持つパートナーを獲得したことが、投資家から極めて高く評価される結果となりました。
不動産の商社化を掲げるヒューリックの戦略的背景と課題
ヒューリック は、東京都心部に多数の優良オフィスビルや商業施設を保有する不動産デベロッパーですが、中長期経営計画において「不動産の商社化」という新たな基本戦略を打ち出しています。
この計画では、M&Aや企業投資を積極的に活用し、観光・ホテル領域など複数事業によるシナジー効果を創出する方針を掲げています。

インバウンド需要の恩恵をダイレクトに受けられるホテル事業への投資を拡充することは、ポートフォリオ変革の必然的な流れです。しかし、日本のホテル・観光産業は、需要拡大の追い風の一方で、深刻な人手不足や生産性・収益性の低迷という構造的な課題に直面しています。
この課題を根本から解決するため、ホテルDXとスマートオペレーションの専門ノウハウを持つ SQUEEZE との提携が不可欠なピースとなったのです。
SQUEEZEが提供する次世代ホテルプラットフォームの真価

SQUEEZE の競争優位性の源泉は、自社開発のクラウド型宿泊管理システムである suitebook を中核とした、ホテル運営のデジタル変革プラットフォームにあります。
同社は、ホテル運営をオペレーションまで含めて一気通貫で担う「フル支援」モデルと、システムのみを提供する「テクノロジー支援」モデルの両輪で事業を展開しています。
特に、需要予測にもとづき客室単価と稼働率を最適化する「AIレベニューマネジメント」機能は、現場の非効率解消にとどまらず、収益の最大化を強力に支援します。

また、ホテル運営で培った知見を活かし、清掃DXや遠隔運営、運営BPO(業務委託)などへと協業範囲を広げており、少ない人員でも高品質なホスピタリティを提供できる体制を整えています。
協業第1弾プロジェクトとオフィスビルコンバージョンの壁
両社の提携を具現化する具体的な協業の第1弾として、東京・銀座にあるオフィスビルをアパートメントホテルへと用途転換(コンバージョン)するプロジェクトが発表されました。
事業主体となるのは、 ヒューリック とリノベーション専門企業であるリアルゲイトが共同で手掛ける HistoRy です。
今回の銀座プロジェクトでは、2026年7月3日に取得したオフィスビルを 41 室の多人数・複数泊向けアパートメントホテルへと改修し、 SQUEEZE が運営を担う形で2028年春頃の開業を目指しています。
現在、東京都心における小規模なオフィスビルをインバウンド向けのホテルへ用途変更することは経済合理性が高い戦略です。しかし、厳格な設備要件や緊急時の駆けつけ体制の確保など、実務面で高いハードルが存在します。
ここで SQUEEZE のフル支援モデルを導入することで、不動産オーナーは複雑なコンプライアンスリスクから解放され、ローコストで合法的なホテル運営が可能になるのです。
業界全体の共通基盤へ向けた両社トップの決意と展望
今回の提携に際し、 ヒューリック の野口和宏専務執行役員は、自社の不動産開発の知見と SQUEEZE のホテルDXノウハウを掛け合わせることが、業界の構造的課題を解決するソリューションになると強調しています。
また、 SQUEEZE の舘林真一CEOも、この取り組みを一社の効率化にとどまらず「業界全体の共通基盤」へと広げ、日本の観光産業の生産性と魅力を高めていく決意を表明しています。
強固な資本力を持つデベロッパーが最適な立地を供給し、 SQUEEZE がオペレーションシステムとBPOを一手に引き受けるという分業体制が確立しつつあります。
人手不足に悩む日本の宿泊業界において、この協業モデルは観光インフラ全体を底上げする不可欠な次世代プラットフォームとなるでしょう。