NTTの株価はなぜ下落?150円割れの理由と今後の見通しを徹底解説

NTTの株価はなぜ下落?150円割れの理由と今後の見通しを徹底解説

2026年6月10日

日本を代表する通信インフラ企業であり、高配当のディフェンシブ銘柄として個人投資家からも絶大な人気を集める日本電信電話株式会社(NTT:9432)。

長らく150円から160円のレンジで安定推移していた株価ですが、2026年6月初旬に心理的節目である150円を明確に割り込み、年初来安値となる146.0円を記録しました。

なぜ、これほどまでに時価総額が大きく安定しているはずのNTT株が急落したのでしょうか?

本記事では、NTTの株価が下落した3つの構造的な理由と、今後の見通しを左右する重要なキーワード(NTT法廃止IOWNなど)について、最新の市場動向を踏まえて分かりやすく解説します。

NTT株価下落を引き起こした3つの主要因

一見すると売上は堅調で、株主還元策も打ち出しているNTTですが、市場はより深い部分にあるリスクを警戒しています。株価下落の背景には、主に以下の3つの強大な逆風が存在します。

「利益なき成長」と次期決算の減益見通し

株価下落の直接的な引き金となったのは、2027年3月期(2026年度)の業績見通しにおいて露呈した収益性の悪化です。

会社側の発表によると、次期は営業収益(売上高)が前期比で6,509億円増加し、15兆600億円に達するという野心的な見通しを示しました。しかし、これだけの増収にもかかわらず、最終利益は前期比で5.5%(金額にして570億円)の大幅な減益となり、1兆円の大台を割り込む9,800億円に落ち込むと予測されています。

財務指標2026年3月期(実績)2027年3月期(予想)増減率
営業収益14兆4,091億円15兆600億円+4.5%
営業利益1兆7,062億円1兆7,100億円+0.2%
当期利益1兆370億円9,800億円5.5%

次世代インフラへの移行に伴う莫大な先行投資や、深刻なコスト増圧力が利益を圧迫しており、市場からは厳しい評価が下されました。

政府保有株の売却という巨大な需給悪化リスク

投資家心理を最も圧迫している外部要因が、日本政府が保有するNTT株式の売却計画です。

現在、防衛費増額の財源確保を目的として、政府が保有する約4.7兆円から4.8兆円規模のNTT株式を売却する案が議論されています。これほど巨大な国家資産が市場に放出されれば、株式の供給過多(オーバーハング)を引き起こし、株価の下落圧力となることは避けられません。

自民党内では「20年程度かけて段階的に売却する」といった案も検討されていますが、それでも毎年2,400億円規模の売り圧力が市場にかかり続ける計算となり、投資家にとっては最悪の需給悪化シナリオとして警戒されています。

日銀の政策転換(利上げ)による高配当銘柄への逆風

日本のマクロ経済のパラダイムシフトも、NTT株には逆風となっています。

日本銀行は長年維持してきた大規模金融緩和からの脱却を進めており、政策金利の引き上げ(利上げ)や国債買入の減額計画が進行しています。

金利が上昇する世界では、安全資産である債券の利回りが上がります。その結果、これまで「安全で高配当」という理由でNTT株(ボンド・プロキシ=債券代替銘柄)を買っていた投資家の資金が、より魅力的な金融株や債券へと流出しているのです。また、金利上昇は、数兆円規模の有利子負債を抱えながらインフラ投資を行うNTTにとって、調達コストの増大という直接的なダメージにもつながります。

アナリストの強気予想と市場価格の大きな乖離

このように市場では警戒感が強まっていますが、証券会社のアナリストによる投資判断は意外にも強気な見通しを維持しています。

2026年6月時点でのコンセンサス評価を見ると、「強気買い」や「買い」が多数を占め、平均目標株価は173円に設定されています。これは、直近の下落した株価水準から約17.80%もの上昇余地があることを示しています。

アナリストの評価モデルでは、NTTが持つ巨大なインフラ資産やデータセンター事業の潜在価値が高く評価されています。しかし、現実の市場は「政府保有株の売却」や「日銀の利上げ」といった不確実性を重く見ており、理論値に対して大幅なディスカウント(割引)を要求しているのが現状です。

自社株買いは焼け石に水?資本政策のジレンマ

NTT経営陣も株価下落を静観しているわけではありません。株主還元策として、今期の年間配当を5.4円に増配し、最大2,000億円(上限14億株)の大規模な自己株式取得(自社株買い)プログラムを発表しました。

しかし、市場の反応は冷ややかです。なぜなら、NTTの発行済株式総数は約814億株にも上り、今回の自社株買いで市場から吸収できるのは全体のわずか1.7%程度に過ぎないからです。

利益が5.5%縮小する中で、株式数を1.7%減らしたところで、1株当たり利益(EPS)の低下を防ぐことは数学的に不可能です。

さらに、前述した政府による株式売却が実行された場合、NTTが2,000億円分の株を買っても、政府がそれ以上の規模で売り浴びせてくる構造になるため、自社株買いの効果は実質的に相殺されてしまいます。

今後の見通しと注目ポイント:NTT法廃止とIOWN構想

数々の逆風に直面するNTTですが、中長期的な成長ストーリーが失われたわけではありません。今後の株価反転に向けた最大のカギとなるのが、法規制の改革と次世代テクノロジーです。

2025年が正念場となる「NTT法廃止」議論

政府保有株の売却とも深く結びついているのが、「NTT法」の存廃問題です。

現在、経済安全保障や国際競争力の強化を目的として、NTTを縛り付けている規制(研究成果の開示義務など)を撤廃する議論が進められており、遅くとも2025年の通常国会をめどに関連法案が提出される見通しです。

競合他社からの猛反発もありますが、仮に「研究成果の開示義務」が撤廃されれば、NTTは莫大な研究開発の成果を特許として囲い込み、グローバル市場で事業化することが可能になります。これは企業価値を根底から引き上げる強力なカタリスト(株価変動のきっかけ)になり得ます。

次世代インフラ「IOWN」と非通信分野への期待

NTTが長期的な利益成長の切り札として掲げているのが、光電融合技術をベースとした次世代インフラ構想「IOWN」です。

AIの普及に伴い増大する電力消費や通信遅延といった課題を、圧倒的な低消費電力と大容量通信で解決する革命的な技術であり、NTTの未来を担う中核事業です。

また、国内通信事業の成長鈍化を補うため、金融、不動産、エネルギーといった非通信セクターの拡大も急ピッチで進めています。特に金融事業では、2030年度に向けて利益を倍増させる野心的な目標を掲げています。

まとめ:NTT株への投資判断はどうすべきか

NTTの株価が150円の岩盤を割り込んだのは、決して一時的な需給のブレではありません。

  • 次期決算の減益見通しによる収益力への懸念
  • 防衛費増額に伴う政府保有株売却のオーバーハングリスク
  • 日銀利上げによるマクロ環境の悪化

これら3つの逆風が重なり合った結果生じた、必然的なバリュエーションの再評価と言えます。

長期的に見れば、IOWN構想やNTT法廃止によるグローバル展開など、アナリストが評価する確かなポテンシャルを秘めています。しかし、政府保有株の売却スキームが確定し、市場の不確実性が払拭されるまでの間は、上値の重い神経質な展開が続く可能性が高いでしょう。

投資を検討する際は、過去の安定性や配当利回りだけで判断するのではなく、2025年の国会に向けた法改正の動向や、日銀の金融政策といったマクロ要因を注視しながら、慎重にエントリーのタイミングを見極めることが求められます。

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