オフィス用品通販大手のアスクル(2678)が、2025年10月に大規模なランサムウェア被害を受けました。株価が安値圏にある中、「配当や優待狙いで今が買い時なのか?」と迷っている投資家の方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、現時点での投資判断は「様子見(中立)」が賢明です。
本記事では、アスクルの最新のランサムウェア被害状況、配当・株主優待への深刻な影響、そして今後の株価見通しについて、投資家目線で詳しく解説します。

【結論】アスクル株は今買うべきか?投資判断レポート
まず、当記事の結論となる投資判断(レーティング)です。
- 投資判断:中立(NEUTRAL) / 今は買い推奨できません
- 理由:ランサムウェアによる業績悪化の全容が見えず、株主優待も利用停止中のため
- 次のアクション:2025年12月15日の決算発表を待つべき
一見すると高利回りに見えますが、そこには「罠」が潜んでいます。その理由を詳細に見ていきましょう。
アスクル ランサムウェア被害の全貌と影響
2025年10月19日に発生したサイバー攻撃は、アスクルの事業根幹を揺るがす事態となっています。

10月~11月の売上が「蒸発」するリスク
今回のインシデントで最も深刻なのは、「注文受付と出荷の完全停止」です。
- BtoB(ASKUL・ソロエルアリーナ):法人向けサービス停止
- BtoC(LOHACO):個人向け通販停止
- 対応:注文の遅延ではなく「一律キャンセル」措置
11月6日時点では一部FAXでの受注トライアルが始まったものの、Webサイトや物流の本格復旧は12月上旬以降とされています。つまり、約1.5ヶ月間も「お店が閉まっている」状態と同義であり、10月度・11月度の売上が激減することは避けられません。
実際、10月度の月次売上(障害はわずか2日間のみ影響)ですら、マイナス1.8%(LOHACOは-4.8%)に転落しています。
情報漏洩の状況:クレジットカードは無事か?
投資家として気になるセキュリティリスクですが、不幸中の幸いと懸念点の両方があります。
- 安心材料:クレジットカード情報の漏洩はなし(保有しない仕組みのため)
- 懸念材料:法人・個人の「問い合わせ情報」や「仕入先情報」が漏洩し、被害範囲は拡大中
ハッカーグループ「Ransomhouse」による犯行声明も確認されており、予断を許さない状況です。
「高配当・優待」に潜む2つの罠
現在の株価(1,473円前後)で見ると、利回りは非常に魅力的に見えます。しかし、数字の裏側にあるリスクを理解する必要があります。

① 株主優待(LOHACOクーポン)が「使えない」
アスクルの株主優待は、LOHACOで使える割引クーポン(年間4,000円相当)として人気です。
しかし、現在LOHACO自体がシステム障害で停止しているため、優待クーポンも利用停止状態となっています。復旧のめどが立つまで、優待の実質的価値は毀損していると言わざるを得ません。
② 業績悪化による「減配リスク」
- 予想配当利回り:約2.58%
- 優待利回り:約2.72%
- 合計利回り:約5.30%
合計5%超えは魅力的ですが、これはあくまで「予想」です。
アスクルは今回の攻撃を受ける前から、実は営業利益-21.5%の減益予想(2026年5月期)を出していました。これにランサムウェア被害の特損や売上減が加われば、業績の下方修正は必至です。
最悪のシナリオとして、「配当の減額(減配)」が発表されるリスクも考慮しておく必要があります。
3. 二重の危機(Dual Crisis)とは?ファンダメンタルズ分析
アスクルが直面しているのは、単なる一時的なシステムトラブルだけではありません。
- オペレーショナル・リスク:ランサムウェアによる突発的な損失
- ファンダメンタルズの悪化:以前から続く本業の収益性低下
この「二重の危機」により、企業の基礎体力が奪われています。攻撃前の第1四半期決算でも、増収ながら大幅な減益(営業利益-15.2億円)となっていました。
ここに巨額のシステム復旧費用や補償コストがのしかかるため、財務状況は予断を許しません。

まとめ:アスクル株の買い時はいつ?
現時点でのアスクル株への投資は、不確実性が高すぎます。
「株価が下がっているからチャンス」と飛びつくのは時期尚早です。
投資家が注目すべき「Xデー」
2025年12月15日(月)
2026年5月期 第2四半期決算発表
この日に以下の情報が開示されるはずです。
- 被害総額と特別損失の計上額
- 通期業績予想の下方修正内容
- 配当予想の変更有無
- システムの完全復旧時期
これらを確認し、悪材料が出尽くした(アク抜けした)ことを確認してから投資判断を行っても遅くはありません。現在は「待機(Wait-and-See)」を強くおすすめします。
※本記事は情報の提供を目的としており、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定はご自身の判断で行ってください。